WBC2013出場までの経緯
レプリカユニフォーム紹介の記事でも簡単に書いたが、侍ジャパンが第3回WBCへの出場を決めるまでは実に色々あった。
2011年7月22日の日本プロ野球選手会臨時大会で、WBCにおいて、他の国際大会では当然のように認められている代表チームのスポンサー権・グッズの商品化権をWBCIから取り戻すまではWBCには出場しないことを決定した。
第3回を前にして、WBCという新しい野球の国際大会の問題点の一部を改めて日本が浮き彫りにした、というわけである。
本来なら野球の国際組織であるWBSCが主催する国際大会こそを最高峰に位置づけて、その大会にメジャーリーガーも出場すべきなのだが、現状ではそうはなってない。WBCは一国のプロリーグであるMLBが選手会と共同運営しているWBCIが主催する大会である。そのため、というのもおかしいのだが、大会の収益66%がMLBに流れ込むようになっている。日本への配分は13%となっている。
主催者がMLBである以上はやむを得ない面もあるのだが、最大の問題点は、本来なら各国の代表が持つ権利までもが、WBCが絡むとMLBに奪われてしまうことである。この権利、スポンサー権・商品化権などの代表ライツを奪還するために日本プロ野球選手会はWBC不参加を決めたわけである。
だが、そんな日本の脅しに簡単に屈するアメリカではなかった。
WBCIは日本の要求を拒否した上で日本不出場でも開催する意向を示し、出場可否の回答期限を9月30日まで定めたのである。NPBと球団も、選手会同様に不出場の姿勢を取っていたが、出場可否の回答期限を過ぎても交渉出来るように求める文書をWBCIに提出した。
2011年11月に侍ジャパン常設化が決定し、2012年3月10日に秋山幸二監督指揮のもと、東日本大震災復興支援ベースボールマッチが開催された。さらに同年秋と翌年春の国際強化試合も決定した。
2012年7月20日、日本プロ野球選手会はWBC2013への参加を決定した。要求は何一つ実現しなかったが、結局は9月4日に決議を撤回し出場を決めた。日本企業のスポンサーの問題は、あくまで大会スポンサーなので主催者側に流れるのは当然なことだった。代表チームの商品化権は、侍ジャパン常設化により代表独自のスポンサーを募り、WBC以外での代表グッズの販売などで収益を見込めると判断されたのである。
ただの野球ファンからすれば、この一連の騒動は不毛でしかなく、誰も得することもない、勝者なき結末だった。まだまだ始まったばかりの大会、個人的には日本プロ野球選手会の動きは早すぎたかな、という感じだった。
一難去ってまた一難、とはこのことで、WBC参加が決まったものの代表監督人事が進展しないのであった。復興支援マッチで指揮をとった秋山幸二が最有力であったが固辞。選考は加藤コミッショナー一任となったが、落合博満、原辰徳、またしても秋山幸二への打診はすべて失敗に終わる。
WBCの日本ラウンドを主催する読売グループから山本浩二を推す声もあったがブランクを考え見送られ、また原か秋山でどうかと無限ループに陥るのであった。
この問題の原因は監督選考の規定がないこと、さらには加藤コミッショナーのリーダーシップの欠如などが挙げられている。加藤コミッショナーは「私に一任を」と言ったくせに、「私では重みがない、王さんやプロの意見を尊重したい」などと言い出す始末である。
2012年10月10日、ようやく代表監督が山本浩二に決定した。結局山本浩二かい!と思った。就任会見でも「心を一つに」という実に抽象的な表明のみで、不安しかなった。押しつけられた、というイメージしかなく、さらにはダルビッシュらメジャー組全員不参加という事態。日本代表の「覚悟」をまったく感じない船出となった。
日本代表メンバー
監督
88 山本浩二
コーチ
63 高代延博
73 緒方耕一
75 橋上秀樹
78 東尾修
81 立浪和義
92 与田剛
99 梨田昌孝
投手
11 涌井秀章(埼玉西武L)
14 能見篤史(阪神T)
15 澤村拓一(読売G)
16 今村猛(広島C)
17 田中将大(東北楽天GE)
18 杉内俊哉(読売G)
20 前田健太(広島C)
21 森福允彦(福岡ソフトバンクH)
26 内海哲也(読売G)
28 大隣憲司(福岡ソフトバンクH)
35 牧田和久(埼玉西武L)
47 山口鉄也(読売G)
50 攝津正(福岡ソフトバンクH)
捕手
2 相川亮二(東京ヤクルトS)
10 阿部慎之助(読売G)
27 炭谷銀仁朗(埼玉西武L)
内野手
1 鳥谷敬(阪神T)
3 井端弘和(中日D)
5 松田宣浩(福岡ソフトバンクH)
6 坂本勇人(読売G)
7 松井稼頭央(東北楽天GE)
41 稲葉篤紀(北海道日本ハムF)
46 本多雄一(福岡ソフトバンクH)
外野手
9 糸井嘉男(オリックスB)
13 中田翔(北海道日本ハムF)
24 内川聖一(福岡ソフトバンクH)
34 長野久義(読売G)
61 角中勝也(千葉ロッテM)
基本オーダー
1(二)鳥谷敬
2(指)井端弘和
3(右)内川聖一
4(捕)阿部慎之助
5(中)糸井嘉男
6(遊)坂本勇人
7(左)中田翔
8(一)稲葉篤紀
9(三)松田宣浩
1次ラウンド
プールA:福岡ヤフオクドーム
GAME1
ブラジルvs日本
🇯🇵 0 0 1 1 0 0 0 3 0 5
🇧🇷 1 0 0 1 0 0 0 0 0 2
(日)田中将大、杉内、攝津、能見、牧田─相川、阿部
(ブ)フェルナンデス、ゴウベイア、仲尾次、コンドウ、ノリス─フランカ
【本】
WBC第1ラウンドが初めて福岡で開催された。
初戦の相手は予選を勝ち抜いて初のWBC出場を果たしたブラジルである。
先発は田中将大。
主将で4番を指名された阿部慎之助は、膝の状態が悪くベンチスタートとなった。格下であるが、初戦はどんな相手でも難しいものである。
侍ジャパンは1回裏にまさかの先制を許す苦しい展開。練習試合から立ち上がりが悪い田中を早めにあきらめて、杉内に交代。
4回に侍ジャパンは逆転に成功するが、すぐに追いつかれ、攝津で逆転されてしまう。まさかの展開となったが、8回に代打井端のタイムリーで同点。さらに代打の阿部が逆転の一打を放った。ブラジルは7回までリードするという展開で大金星直前まで迫ったが、最後は日本の頼れるベテランにやられてしまった。
GAME2
日本vs中国
🇨🇳 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2
🇯🇵 0 1 0 0 4 0 0 0 0 5
(日)前田、内海、涌井、沢村、山口─阿部、炭谷
(中)羅夏、朱大衛、陳坤、楊海帆、李帥、呂建剛─王偉
【本】
第2戦は中国戦である。
先発は前田健太。田中将大と共に投手陣の軸として期待されたピッチャーだ。期待どおりに5回まで中国を無失点に抑える好投である。
攻撃陣は2回に先制するが、その後は追加点を奪えず重い空気に。
2番手ピッチャーは内海である。本来なら福岡ラウンド第3戦のキューバ戦に登板予定であったが、急遽のリリーフとなった。本来、先発三本柱は田中、前田、内海という構想だったが、田中に不安を感じた首脳陣は東京ラウンド初戦を田中ではなく他の投手にしようとして、候補の一人として繰り上げで内海を第2戦で登板させたようだ。このあたりから各ピッチャーの役割分担が曖昧になってしまったような気がする。
試合は5回に内川、糸井のタイムリーで4点を追加して勝負を決めた。快勝ではあったが、どうもグダグダの舞台裏が透けて見えてしまったようでスッキリしない勝利だった。
GAME3
キューバvs日本
🇯🇵 0 0 0 0 0 0 0 0 3 3
🇨🇺 0 0 1 1 0 1 0 3 X 6
(日)大隣、田中、澤村、森福、今村─阿部、相川
(キ)ペレス、ゲバラ、カスティーヨ、ゴンサレス、イグレシアス、ヌニェス、ガルシア -─サンチェス、モレホン
福岡ラウンド最終戦の相手はキューバ。
どちらも東京ラウンド進出を決めているため、順位決定戦である。五輪時代とは違い、WBCにおいては対キューバは負けなしと相性がいい。というか相次ぐ亡命のために、キューバの戦力が年々低下しているのである。
とはいえ、このチームではキューバに力勝負を挑むと太刀打ちできないことがはっきりした。
先発の大隣は3回にホームランで失点。つづく田中も立ち上がりにセペダにタイムリーを浴びた。その後も沢村、今村が打ち込まれて6失点。
だが大隣はチェンジアップを封印していたし、田中は変化球主体に切り替えてからは5連続奪三振である。
打線は9回まで無得点である。2回、3回、4回、6回に4度の得点チャンスがあったのだが、いずれも生かすことはできなかった。
最終回に井端などのタイムリーで3得点。もちろん0点で終わるよりはマシではある。結果的には今後のキューバへの対応策が明確になったので、収穫ありの試合ではあった。
だが次の東京ラウンドはまさかの展開となり、日本代表がキューバ代表と対戦することはなかった。