侍ジャパンと、ユニフォームと

野球日本代表、すなわち侍ジャパンのユニフォームなどに関する二、三の事柄。日本代表ネタ、国際大会ネタがないときは野球カードでつなぎます。お許しを。

【侍ジャパンの歴史・記憶 2013WBC後篇】天国への階段を昇ったら、地獄への扉を開いてた

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2次ラウンド

プール1:東京ドーム

東京ラウンドの初戦は台湾。

第1ラウンドB組である台中ラウンドでは、韓国が敗退するという波乱が起きていた。台湾、オランダ、韓国が2勝1敗で並んだが、韓国は大会規定で3位となってしまったのである。というわけで東京ラウンドには台湾とオランダが進出してきた。

 

WBC2013東京ラウンド ポスター

 

GAME1

台湾vs日本

🇯🇵  0 0 0  0 0 0  0 2 1  1   4

🇹🇼  0 0 1  0 1 0  0 1 0  0   3
(日)能見、攝津、田中、山口、沢村、牧田、杉内─阿部、相川、炭谷
(台)王建民、潘威倫、郭泓志、王鏡銘、陳鴻文、林羿豪、陽耀勲 ─林泓育、高志綱
【本】


試合は日本球史に残る試合となった。だが、アメリカに行く前にクライマックスを迎えてしまったと言えなくもない。調子の上がらない田中を先発から外し、能見がスターターとなった。
侍ジャパンは3回、5回に1点を失い、攻撃陣は台湾代表の先発・王建民から得点を取れずにいた。8回にようやく坂本のタイムリーで同点に追いつくが、その裏にすぐ勝ち越されてしまった。そして9回表の最終回、四球で出塁した鳥谷が二死から盗塁を決める。そこから井端の起死回生のタイムリー!日本代表は土壇場で台湾に追いついたのだ!試合は延長となり、10回表に中田の犠牲フライて勝ち越した侍ジャパンが勝利したのである。

 

 

GAME2

オランダvs日本

🇯🇵  1 5 1  3 1 1  4   16

🇳🇱  0 0 0  0 0 4  0   4
(日)前田、内海、山口、涌井─阿部
(オ)コルデマンス、ストイフバーゲン、ファンドリエル、ベジスティック、バレンティナ ─リカルド
【本】日:鳥谷1号、松田1号、内川1号、稲葉1号、糸井1号、坂本1号


第2戦の相手はWBCでは初の対戦となるオランダ代表である。オランダは初戦で強豪キューバを破り駒を進めてきた。

侍ジャパンの先発はエース前田健太。

初戦の台湾戦の接戦から一転しての大量得点ゲームとなった。6本のホームランである。

個人的なことをいえば五郎が見に行った試合である。WBCは2006も2009も韓国戦を見たので、2013年はいつもと違う対戦相手、できればアジア諸国以外で、と思ってせっかくならとオランダ戦にした。でも前日の台湾戦にすればよかったと、少し思った。いや、かなり思った。
初回、鳥谷の先頭打者ホームランでゲーム開始である。その後もカーニバルのように、祝祭にふさわしく出し惜しみなくホームランを連発した。
先発の前田健太は5回を無失点に抑える好投。6回に内海がバレンティンにタイムリーを打たれ4点を失うが、7回コールドで勝利である。

 


GAME3

日本vsオランダ

🇳🇱  1 0 0  0 0 0  2 3 0   6

🇯🇵  0 8 0  0 0 0  0 2 X   10
(日)大隣、澤村、田中、今村、森福、山口、涌井、牧田─炭谷、相川
(オ)バーグマン、イセニア、パべレク、ヘイエスタク、バレンティナ─リカルド、デクーバ
【本】日:阿部1号、2号
   オ:シモンズ2号


東京ラウンドからアメリカでの決勝ラウンドに駒を進めたのは日本と、キューバではなくまさかのオランダであった。

というわけで東京ラウンド最終戦の順位決定戦はオランダ戦となった。

侍ジャパンの先発は大隣。試合は、今度はオランダのシモンズの先頭打者ホームランで幕を開けた。

だが大隣はすぐに立ち直り、回をまたいで4連続奪三振である。
打線も2回裏に、阿部の1イニング2ホームランなどで大量8得点で一気に逆転した。その後試合は落ち着くが、終盤の7回、8回に森福、山口などが打ち込まれ5点を失い2点差となった。だが侍ジャパンも8回裏に2点を追加し試合を決め、東京ラウンド1位通過となった。

 

 

 

 

 

決勝ラウンド:AT&Tパーク

遂にアメリカ。決勝ラウンドの準決勝である。2013WBCの四強は日本、オランダ、ドミニカ共和国、プエルトリコとなった。日本の対戦相手はWBCでは初対戦となるプエルトリコである。

 

 

SEMI FINAL

日本vsプエルトリコ

🇵🇷  1 0 0  0 0 0  2 0 0   3

🇯🇵  0 0 0  0 0 0  0 1 0   1
(日)前田、能見、攝津、杉内、涌井、山口─阿部
(プ)マリオ・サンティアゴ、ホセ・デラトーレ、ゼイビア・セデーニョ、フォンタネス、J・C・ロメロ、フェルナンド・カブレラ ─ヤディアー・モリーナ
【本】プ:アレック・リオス1号


先発は侍ジャパンのエース前田健太。
初回にプエルトリコのアービレイスにタイムリーを打たれ先制を許す侍ジャパン。打線はプエルトリコの先発マリオ・サンティアゴ(後に阪神に入団)を打ち崩せず、得点を奪えない。
7回表にはアレックス・リオスに2ランホームランを打たれて3点差とされてしまう。
8回裏、侍ジャパンの攻撃で東京ラウンドの台湾戦同様に、日本の球史に残るであろうプレーが起こる。
一死から鳥谷が3塁打を放つと、つづく井端のタイムリーで1点を返した。さらに内川がつづき、ランナー1、2塁で4番阿部の打席である。
カウント0―1でダブルスチールだが、2塁ランナーの井端はスタートが悪かったため帰塁した。本来ならそれを見て1塁ランナーの内川も戻らないといけないのだが、井端がいる2塁に突っ込み、捕手モリーナにタッチされてアウトである。
このミスで、逆転へと傾きかけてた流れが止まってしまったのは事実だろう。侍ジャパンはこのまま得点を奪えず、準決勝で敗北となった。

この痛恨のミス、ベンチの采配に関してグリーンライト、グリーンライト、という言葉が踊っているが実際のサインは、盗塁できるチャンスがあったらしてもいい(無ければしなくていい)、というグリーンライトではなく、必ず盗塁(ダブルスチール)をしろ、でも仕掛けるタイミングはお任せします、というものであったようだ。
行けたら行け、でもなく、次の1球で仕掛けろ、という盗塁のサインでもなかったというわけだ。
100パーセント成功させなければいけない場面でのダブルスチール、バッターは4番阿部、キャッチャーはモリーナである。
この采配が正しかったのかどうか。モリーナを警戒し、阿部に託すべきだったのか。今大会は打線が不振だったこともあり、足を使った攻撃に頼ることが多かった。足に救われた場面もあった。打てなくても点が取れるの日本の野球だ。そのためにも、この場面は最大級の緻密さを要求される場面であった。
侍ジャパンにとって、そこでのミスによる敗戦は、あまりにも大きくて堅い。グリーンライトという言葉が歩き出し、何か大事なことが曖昧になり、どうもベンチと選手との間に距離を感じてしまった。

 

 

WBC2013の課題

桑田真澄が残念だと語っていたのは、準決勝で負けた侍ジャパンが翌日の昼には帰国してしまったことで、開幕前という時期もあり、一刻も早く所属チームに戻るべきなのはわかるが、せめてもう一日残ってオランダvsドミニカ共和国の対戦を観戦してほしかった、ということだ。
それは選手たち、さらにはそれを伝えることは日本球界の財産になったはずだ。
日本はペナントレースを盛り上げるだけではもう駄目なのだ。日本代表を、侍ジャパンを強化して国際大会で勝つことは時代が要求していることなのだ。
日本はラテン系の選手たちのように、パッと集合してパッとまとまり実力を発揮できる国ではない。しっかりと準備をして臨まなければ勝てないのだ。

そのためにも日本は大会前に監督を選ぶ、などと呑気なことをやっていてはいけない。
過去2大会ではそれでも勝てた。それは他国もオープン戦感覚でWBCを見ていたからだ。だが、この大会からは明らかに変わった。ドミニカ共和国の完全優勝というラテン系諸国の実力発揮や、イタリアの2次ラウンド進出、オランダの準決勝進出という欧州勢の躍進、といった明確な結果として表れたわけである。
2011年10月に侍ジャパン常設化が決定したが、監督決定までに結局は1年を要した。誰が侍ジャパン監督の任命権をもつのか、といった議論が先送りになっていたからだ。誰を監督にするか以前に、誰が決めるのかを決めていない。
誰も責任をとろうとしないのだ。「私に一任を」と一度は手を挙げたコミッショナーも、「私では重みがない」などと翻す始末だ。責任の所在だけがたらい回しにされ、肝心のことが一向に決まらない、これを繰り返しては意味がない。

 

WBC2013という大会はどうだったのか。
もちろんまだまだ問題点は、第1回のときから変わらない問題点も含めて、問題は山積だが一定の前進は果たした大会だと思う。まずは初めて予選が開催されたこと。これによって参加国が劇的に増えたわけである。
まずはWBC本選出場を目指すという明確な目標ができた、という国が増えたのはベースボールのグローバル化には大きな一歩である。また、すでに書いたがラテン系諸国や欧州勢の活躍は大会を大いに活性化してくれた。
偏った審判の編成(多少の改善はあったが)、開催時期に球数制限など議論すべき点はまだまだ多い。ベースボールのグローバル化のための大会、というのが建前で、実際はMLBの新たな収益源でしかない大会、というのは正しいのだろう。だがそれでもベースボールという競技にとってWBCは必要な大会である。まずは継続することだ。