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第3回プレミア12開催
閉ざされた世界
第3回プレミア12が帰還した。
その前回、第2回大会が行われたのは2019年11月のことだった。
あの頃の空気感を、今、どれだけの人が思い出せるだろうか。
大会終了からおよそ3ヶ月後、世界はある未知の病原菌に侵食されていった。
そう、COVID-19── 新型コロナウイルスという名のパンデミックだ。
すべてが変わった。日常のリズムが、当たり前だった風景が、根こそぎひっくり返された。
感染拡大は、人々の生活だけでなく、世界中のあらゆる活動に制限を強いることとなった。
イベントは中止か延期、あるいは無観客での開催を余儀なくされ、そこに例外はなかった。
野球界もまた、その余波を免れなかった。プロ野球のレギュラーシーズンは縮小を余儀なくされ、試合は観客のいないスタジアムでひっそりと行われた。
前回の第2回プレミア12は東京五輪の予選を兼ねた大会でもあったが、その東京五輪自体が延期となり、2021年、無観客の中でようやく開催された。
そしてその年に予定されていた第5回WBCも延期。予定表はもはや「ぐしゃっと」音を立てて崩れ去った。
新しい秩序
プレミア12は、本来ならWBCの中間年に行われるはずの大会だ。
その原則に従えば、2025年に第3回大会が開催されるはずだった。だが、事態は複雑だ。
第5回WBCが2023年にずれ込み、さらに第6回WBCが2026年に控え、2028年にはロサンゼルス五輪が予定されている。
国際大会のスケジュールは、もはや一冊の使い古されたノートのように、ぐちゃぐちゃに書き込まれている。
そんな中で決断されたのが、2024年の開催だった。
果たしてこの新たなタイミングがもたらす意味は何か。
そこに未来への伏線は張られているのか。それとも── ただの偶然か。
日本代表メンバー
投手
高橋宏斗(中日D)
清水達也(中日D)
戸郷翔征(読売G)
大勢(読売G)
才木浩人(阪神T)
伊藤大海(北海道日本ハムF)➡辞退
北山亘基(北海道日本ハムF)
早川隆久(東北楽天GE)
藤平尚真(東北楽天GE)
鈴木翔天(東北楽天GE)
隅田知一郎(埼玉西武L)
横山陸人(千葉ロッテM)
鈴木昭汰(千葉ロッテM)
井上温大(読売G)➡追加招集
捕手
坂倉将吾(広島C)
佐藤都志也(千葉ロッテM)
古賀悠斗(埼玉西武L)
内野手
岡本和真(読売G)➡辞退
吉川尚輝(読売G)➡辞退
牧秀悟(横浜DeNA)
小園海斗(広島C)
紅林弘太郎(オリックスB)
源田壮亮(埼玉西武L)
栗原陵矢(福岡ソフトバンクH)
清宮幸太郎(北海道日本ハムF ) ➡追加招集
村林一輝(東北楽天GE)➡追加招集
外野手
森下翔太(阪神T)
佐野恵太(横浜DeNA)
万波中正(北海道日本ハムF)➡辞退
五十幡亮汰(北海道日本ハムF)
辰己涼介(東北楽天GE)
桑原将志(横浜DeNA)➡追加招集
基本オーダー
1. (左) 桑原 将志
2. (二) 小園 海斗
3. (中) 辰己 涼介
4. (右) 森下 翔太
5. (三) 栗原 陵矢
6. (一) 牧 秀悟
7. (遊) 源田 壮亮
8. (指) 佐野 恵太
9. (捕) 坂倉 将吾
オープニングラウンド
グループB:日本
第1戦:バンテリンドーム
日本 VS. オーストラリア
🇦🇺 0 0 0 0 0 3 0 0 0 3
🇯🇵 1 1 1 2 0 0 1 3 X 9
(日)井上温大、横山、藤平、鈴木翔、清水 − 坂倉
(豪)L.ソープ、S.ホランド、B.タウンゼント、M.ニューンボーン、J.ケネディ、T.ヴァンスティーンゼル、T.アサートン、C.ウィン、D.マグラス、W.シェリフ、J.ガイヤー、S.ケント − パーキンス
【本】ボヤルスキー、ウィングローブ
侍ジャパンの先発は初代表の井上温大。オーストラリアはメジャー経験ありのルイス・ソープ。
初回、オーストラリアの攻撃は今大会最大級の注目選手であるトラビス・バザナから。そのバザナはいきなりヒットで出塁。すかさず二盗を決める期待どおりの活躍だが、得点には至らなかった。
侍ジャパンは初回に辰巳の犠牲フライで1点を先制。その後もオーストラリアのエラーなどで点を重ねて5点差とした。
守備にミスが目立つオーストラリアだが、6回表に9番ボヤルスキーのソロホームランで1点。さらにバザナが出塁し、4番ウィングローブもホームランを放ち2点差に迫った。
侍ジャパンは7回にようやく、タイムリーによる1点で差を6点とした。
さらに8回に打線がつながり、森下、栗原の連続タイムリーで3点を追加した。
中盤で2点差まで追い詰められたが、終盤に打線が繋がり最後は清水達也が締めた。
敗れたオーストラリアはやはりディフェンスに多くの課題が残る。打線はパワーがあり、バザナという期待の若手がいるだけに、守備力が上がれば、といつも思う。
グループB:台湾
第2戦:台北ドーム
日本 VS. 韓国
🇰🇷 0 1 0 1 1 0 0 0 0 3
🇯🇵 0 2 0 0 2 0 2 0 0 6
(日)高橋、隅田、藤平、大勢 − 坂倉
(韓)崔丞鎔、劉泳澯、郭道圭、李 映河、崔智旻、鄭海英、金 瑞鉉、金 兌勁 − 朴東原
【本】朴東原、森下
侍ジャパンの先発は高橋宏斗。韓国代表は崔丞鎔。
胃が痛くなる試合だった。
これが国際大会だ。
韓国は2回表、洪昌基のタイムリーで1点を先制。
だが、侍ジャパンは直後の2回裏に紅林の2点タイムリーで逆転する!
ところが4回表、韓国はキャッチャーの朴東原のホームランで同点に追いつく。さらに5回表、代打の尹棟熙がタイムリーを打ち韓国が勝ち越し。
まだ5回なのに心にどんよりとした影が射し込む。これが日韓戦だ。前大会の決勝戦でも、去年のWBCでも、まだ序盤なのに少しでも韓国にリードされると、もう、ダメだ、などと、情けないことを思ってしまうのである。
それを吹き飛ばしてくれたのが、牧秀悟!
2死から三連続四死球で満塁のチャンスをつくると、牧秀悟が値千金の逆転タイムリー!
7回裏には森下の2ランホームランも飛び出し、3点差とした。
先発の高橋宏斗は、4回で8奪三振だが被安打7の2失点。特に逆転の後に打たれたホームランは痛かった。
2番手の隅田も勝ち越しタイムリーを許すが、6回、7回は調子を取り戻し無失点に抑えた。
8回は藤平が登板し、圧巻の三者連続三振。オーストラリア戦から6連続三振だ。
9回は守護神・大勢。危なげなく三人で締めた。
侍ジャパン2連勝である。
グループB:台湾
第3戦:台北ドーム
日本 VS. 台湾
🇯🇵 1 0 1 1 0 0 0 0 0 3
🇹🇼 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1
(日) 才木、鈴木昭、北山、大勢 − 坂倉
(台) チェン・ボーチン、ファン・エンツー、ワン・ジシェン、ジャン・グオハオ、ジュアン・シンイェン、チェン・グァンウェイ − リン・ジャーチェン、タイ・ペイフォン
【本】源田、タイ・ペイフォン
侍ジャパンの先発は才木浩人。台湾の先発は陳柏清。
侍ジャパンは初回に今大会絶好調の森下の犠牲フライで1点を先制。
さらに3回表に辰己涼介が大会初安打となるタイムリーを放ち1点を追加。
4回表には初スタメンの源田が代表初ホームランでさらに1点。
台湾は7回裏にタイ・ペイフォンのホームランで2点差に追い上げるが、侍ジャパン投手陣の前に反撃はここまで。
先発の才木は5回2/3を被安打3、無失点の好投。鈴木昭、北山、大勢のリレーもホームランの1失点に抑えた。
侍ジャパンは全勝対決を制し、大会3連勝でスーパーラウンド進出に大きく前進した。
グループB:台湾
第4戦:天母スタジアム
日本 VS. キューバ
🇨🇺 0 0 0 1 0 3 2 0 0 6
🇯🇵 0 1 1 1 2 1 0 1 X 7
(日) 早川、横山、鈴木昭、清水、藤平 ― 佐藤
(キ) フィゲレド、パドロンアルティレス、グティエレス、メディーナ、サルディ、モイネロ ― ペレス、コスメ
侍ジャパンの先発は左腕・早川隆久。キューバ代表はR.フィゲレド。
先制は侍ジャパン。2回裏2死一三塁のチャンスに、8番佐野のセンターへのタイムリーヒットで1点を奪う。
つづいて3回裏、4番森下の犠牲フライで1点を追加した。
4回表にキューバに1点を返されるが、直後の4回裏に佐藤都志也の犠牲フライ、5回裏には牧のタイムリー、佐野の犠牲フライで4点差とした。
だが、6回表にキューバはドレイクのタイムリーツーベース、代わった横山を攻めてアルエバルエナ、代打モンカダのタイムリーで1点差まで詰めよった。
6回裏に日本は押し出しで1点を加えるが、7回表に代わった清水の悪送球で同点に追いつかれてしまう。
緊迫した展開の8回裏、小園が出塁すると代走五十幡。五十幡は栗原の浅い犠牲フライでホームイン。勝ち越しに成功!
最終回は藤平が登板し、デスパイネ、マルティネスにヒットを打たれ、さらに死球で1死満塁のピンチでモンカダを迎えるが、見逃し三振に仕留め、最後はコスメを空振り三振で試合を締め、スーパーラウンド進出を決めた。
グループB:台湾
第5戦:天母スタジアム
ドミニカ共和国 VS. 日本
🇯🇵 1 0 1 0 3 0 1 0 5 11
🇩🇴 1 1 0 0 0 1 0 0 0 3
(日) 戸郷、井上、隅田、横山 ― 坂倉、古賀
(ド) ペラルタ、ヘンリー、ロペス、H.ペレス、ロドリゲス、オガンド、フアン、W.ペレス ― フロレンティーノ、デラクルーズ
侍ジャパンの先発は戸郷翔征。ドミニカ共和国はW.ペラルタ。
すでにスーパーラウンド進出を決めていて、順位による有利・不利もないので日本にとっては調整試合となる。
初回、侍ジャパンは2死満塁というチャンスに、坂倉が四球を選び1点を先制。
しかしドミニカ共和国は、1回裏に元日本ハムのハンソンのタイムリーツーベースで同点に追いつく。さらに2回裏、9番デレオンのタイムリーツーベースで勝ち越しに成功。
勝ち越された侍ジャパンは、3回表に佐藤都志也のタイムリーで同点に。さらに5回表に栗原のタイムリーで勝ち越し。
ここからは侍ジャパンはリードされることはなく、終わってみれば14安打11得点で試合を決めた。
オープニングラウンドは各グループ6チーム中、2チームしかスーパーラウンドに進出できないという厳しい戦いたが、侍ジャパンは全勝でスーパーラウンド進出を決めた。
とはいえ守備・走塁面でのミスが目立った。スーパーラウンドではひとつのミスが致命傷になりかねない。調整が必要である。