アジアCS台湾戦:スポーツ報知
APC。アジアCS。アジチャン。
アジチャンだよ、兄弟。正式名称なんてどうでもいい。アジアプロ野球チャンピオンシップ? 長ぇよ。舌がもつれる。アジチャンでいい。アジチャンで十分。
アジチャンって言った瞬間に、青春が腐りかけた果実みたいに香るんだ。甘くて、酸っぱくて、ちょっとヤバい。
だってこの大会、若さがグラウンドの上でうごめいてる。未来がうなってる。韓国も台湾もオーストラリアも、みんな「俺が次のWBCに出るんだよ!」って顔してる。
お前ら、まだ二十そこらのくせに、何その目のギラつき。
でもわかる。わかるよ。
この大会は、夢と現実の境目で焼かれる肉みたいなもんだ。焦げ目がつくたびに、ひとつの名前が世界に刻まれる。
ほら、第1回のアジチャンを思い出せ。
今永、近藤健介、甲斐、源田、山川。こいつらが後にWBCに行った。
アジチャンはつまり、未来の溶鉱炉。若さという金属を、熱して、叩いて、歪ませて、輝かせる。あれは希望のショーなんかじゃない。焼けた夢の祭典だ。

で、試合だ。侍ジャパンは、台湾の古林睿煬(グーリン・ルェヤン)に五回までノーヒット。まじでバットに当たらねぇ。
なんだあの球は。打者たちは全員、暗闇の中でスイングしてたのか?
無音の絶望。沈黙の五回。
だが七回に森下。ルーキー森下。その名をバットの音で叩きつけた。
ホームランだ。
ホームランだよ、諸君!
ボールが宙を裂いていったとき、ドームの屋根が一瞬だけ息を呑んだ。野球の神様が、たぶん少し笑った。未来が、森下のバットにぶら下がって揺れてた。

そして門脇。森下の同期。
ルーキーで126試合を駆け抜けた男。セカンド、サード、ショートを守って、今夜は3安打。タイムリーも打つ。
もう完全に「若さの具現化」
あれは走る生肉。考える稲妻。汗が思想になっていた。

投げるほうでは赤星。2年目で5勝の赤星が、井端ジャパン初陣で先発。
5回途中まで無失点。
あの投球、まるで地平線に杭を打つみたいだった。若者の投げるボールは、いつだってまっすぐじゃない。震えながら進む。恐れながら突き刺さる。
及川、根本、桐敷、田口──その後の継投も見事。
井端ジャパン、初勝利。おめでとう。だが喜ぶな。これは始まりだ。夜はまだ、未来の沼地の奥に続いてる。
東京ドームの空気は、汗と若さと未来の匂いで満たされていた。観客の拍手の隙間で誰かの心がこっそり崩れ、誰かの夢がふくらんでいた。
アジチャンは、そんな大会だ。
青春が試される場所じゃない。青春が燃やされる場所だ。
焼け焦げた希望の匂いが、ドームの天井にへばりついて離れない。その匂いを嗅いで、俺は思う。
──俺も、まだ、何かを始められるんじゃないか、なんて。