侍Jシリーズ2024:トーチュウ
やはりトーチュウである。
他のスポーツ新聞が「井端?ああ、なんか聞いたことあるね」みたいな顔してクールに無視を決め込む中で、一人トーチュウだけが「いや、井端ですよ?わかってます?」って顔してちゃんと拾ってくる。
この姿勢!この矜持!泣ける!
ありがたいじゃないか。
たとえ世界がどうなろうと、トーチュウはまだ紙面にインクを垂らしている。その音が、俺らにはまるで野球の心臓の鼓動みたいに聞こえるのだ。
んじゃあ、やんごとなきスポーツ新聞の世界へ。

で、プレミア12直前の強化試合。相手、チェコ共和国。チェコて。
なんでチェコ。どういう経緯でチェコ。
強化試合っていうからにはこっちが鍛える側かと思ったら、どう見てもチェコの方が強化されるやつじゃないか。
でもいいのだ。
だって野球ってのは、誰かがボールを受け取ってくれないと成立しないスポーツなのだ。ピッチャーが孤独に投げたら、それはただの投擲事件である。
そうじゃない。
キャッチャーがいて、バッターがいて、観客がいて、チェコがいる。そういう全部があって、やっと野球になるのだ。
だからいいのだ。
チェコよ、今日も投げろ、打て、笑え。
それが野球だ。
で、ページの右上。「朗希MLB挑戦へ」ってさりげなく載ってる。まるでスーパーのチラシの端っこに「白菜特売」って書いてあるみたいに。
でも他紙はそれをドカーンと一面にして「朗希!夢へ!」とか書くんだよ。
夢へじゃねぇ、行くんだよ、朗希は。夢とか言ってる時点でまだ寝ぼけてる。
トーチュウは知ってる。
彼はもう夢の中じゃなくて、現実でボールを投げてるんだってことを。だから小さい文字でいいのだ。それがかっこいいんだよ。伝わるか? 他紙よ!

で、試合。高橋宏斗、才木、北山、大勢、という侍ジャパン投手リレー。この並び、まるで戦国武将が勢ぞろいしたみたいである。
才木、3イニングパーフェクト、7奪三振。
小園と森下も打ってる。結果を出す。そりゃ出すよ。出さないわけがない。この人たち、結果を出すために生まれてきてるんだから。もうDNAの時点で打率.320くらいある。
でも、それでも思うのだ。
野球って結局、勝った負けたの話だけじゃなくて、こうしてトーチュウが紙面の片隅で、井端のジャパンを、才木のピッチングを、まるで落ちたボールを拾うように報じてくれる。
それが尊い。
それがこの国の野球の、美しいところなのだ。