侍Jシリーズ2024:トーチュウ
あまり注目されていない強化試合。
だが、そんな試合を二夜連続でトップに据える、それが東京中日スポーツだ。
この執念、いや、愛。名古屋という都市の矜持。シーズンが終わったあとの乾いた風が、紙面のインクの匂いを増幅させる。羨ましい。名古屋が、羨ましい。
では、ぱやっと本日紹介のスポーツ新聞。

トーチュウの一面に森下翔太。それが侍ジャパン。
「連覇準備OK」見出しのその言葉に、我々はもう未来の悲しみを嗅ぎ取っている。勝利の予感ではなく、むしろ敗北の記憶の方が先に顔を出す。
人間とはそういう生き物だ。

二面に始球式を掲げる。荒木雅博。アライバ。そう、これがトーチュウだ。
郷愁という名の信仰を、軽やかな笑みで正面突破してくる。
紙面の空気が、もう一度、ナゴヤドームの人工芝を思い出している。

早川、戸郷、隅田、鈴木昭、藤平、鈴木翔、清水達也。
この名前の連なりが、まるで俳句のように、音の流れだけで未来を感じさせる。
だがそれは祈りでもあり、呪いでもある。
プレミア12から、すでに次のWBCは始まっている。
侍たちはユニフォームの背中で自分の名前を削り合う。
誰が生き残るのか。それとも、生き残るとは一体、何を指すのか。
新聞は、たかが紙。
けれど、その紙の上にしか、まだ書けない夢がある。それを忘れたら、侍ジャパンも、我々も、ただの統計値になってしまうではないか。