侍ジャパンと、ユニフォームと

野球日本代表、すなわち侍ジャパンのユニフォームなどに関する二、三の事柄。日本代表ネタ、国際大会ネタがないときは野球カードでつなぎます。お許しを。

プレミア12 2024台湾上陸 トーチュウ2024年11月15日

プレミア12 台湾上陸:トーチュウ

ありがたい。実にありがたい。ありがたさが滲み出ているのはやはり東京中日スポーツである。

新聞が感謝の対象になるというのも奇妙な話だが、他紙が「どうでもいい芸能人の結婚」だの「新作スイーツ特集」だのに現を抜かす中で、移動日でもなお侍ジャパンを一面に据えるその執念。

いや、正確に言えば侍ジャパンというか高橋宏斗なのだが。むあいい。侍というより孤高の武士。東海道を一人歩む影法師。

それを見て俺は思うのだ。ああ、井端監督で良かったなあ、と。

あの温厚で、しかし芯に冷たい鉄のような光を宿す男が采配を振るっている。

それだけで、なんだか世の中がまだギリギリ正気を保っている気がしていた。

だが、もう今はそれもない。

朝刊をめくる手が、ちょっとだけ震える。秋の乾いた空気のせいか、それとも時代のせいか。

ってえことで本日紹介のスポーツ新聞。

 

 


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見出しは「韓国圧倒」

おい、待て。まだ戦ってもいないだろうが。

その言葉だけで紙面が一人歩きして、すでに韓国を三タテでもしたような気配を放っている。どこで圧倒したのか。心の中でか? 夢の中でか? 幻影のスコアボードでか?

まるで「韓国圧倒」と印字した時点で勝利が保証されるような錯覚。ああ、文字の暴力。言葉の呪詛。印刷機の中で回転するインクの魔力。

 

だが現実は移動日である。

選手たちは飛行機の中でスナックを食べているかもしれない。

高橋宏斗は窓の外の雲を見ながら、自分がなぜ一面を飾っているのか理解していないかもしれない。

それでも紙面は彼を一面に載せる。なぜか。ネタが無いからだ。

 

そう、ネタが無い。

すべてはその一言に尽きる。

だがネタが無いからこそ、新聞は詩になる。ネタの無さを一面に刷り込んで、それでも「侍ジャパン」と叫ぶその愚直さ、紙面の自己犠牲。もはや信仰である。

 

侍ジャパンはこの日、一面にだけ存在した。

現実ではなく、紙の上でだけ。

だがそれでいい。

野球とは、いつだって紙と幻のあいだにある夢みたいなものなのだから。