プレミア12 キューバ戦:スポニチ
事件が起きた。
とてつもなく長い間、日本球界の地下水脈を支え続けてきた、あの「週刊ベースボール」、通称「週べ」が、プロ野球ファンの週刊バイブルが、昭和の茶の間の象徴が、あの手のインクの匂いが、そんな文化遺産的存在の雑誌が、──やりやがった。
日本シリーズ総決算号となるはずの表紙にいるのは、我らが日本シリーズ王者・福岡ソフトバンクホークスではなく、LAドジャース。
あの、海の向こうの、銀河の住民たち。
なんだこれは。
「ホークスよりドジャースのほうが売れる」
そんなの当たり前だ。マーケティングの素人でもわかる話だ。
だが違うだろ、週ベ。
おまえは誰の雑誌なんだ。誰の汗と誰の涙でできていると思っている。
暮らす世間がいくら大谷ワッショイ、山本ワッショイ、LAワッショイと陽気に踊り呆けていたとしても、おまえは、おまえだけはソフトバンクホークスを表紙に据えるべきではなかったのか。
それが「週刊ベースボール」の魂、すなわち矜持ではなかったのか。
──まあいい。
怒っても、どうせ冬は来る。
地獄のシーズンオフ、いや煉獄のとき。ストーブリーグという名の虚無が始まり、野球ファンたちは先の見えないカレンダーの砂漠を彷徨う。
各球団のファンは契約更改の数字で一喜一憂し、あ、などと井端ジャパンのユニフォームをタンスから引っ張り出す。
そう、まだ泣くな。
我々にはまだ「日韓戦」があるのだ。
そして──2026年春、WBC。あの地平の向こうに。
じゃあ今日紹介のスポーツ新聞。

さて、雨。キューバ戦。
この試合に勝ってスーパーラウンド進出を決めた侍ジャパン、いや井端ジャパン。
「井端ジャパン」──響きがいい。
語感が湿ってる。雨中に似合う。スポニチもトーチュウも、この名を躊躇なく使った。国民の承認。
そしてプレミア12の神話、神走塁。
かつての日本代表の「アンダースロー枠」があった時代を経て、今は「ぴの枠」である。そう、初代は片岡易之。知らんけど。
だがその精神は受け継がれている。代走・五十幡亮汰。球界最速の影が、雨を切り裂き、決勝点をもぎ取ったあの瞬間。日本列島の脊髄を、電流が走った。

そして、忘れてはならない藤平尚真。
むしろこちらが一面を飾るにふさわしいと思うんたけど、どう?
一死満塁、雨の夜、マウンドは泥濘。白球は濡れ、魂は乾いていた。
それでも、彼は立っていた。
二者連続三振。
そして捕手・佐藤都志也と交わしたあのガッツポーズ。濡れた拳が、時代の空気をぶち破った。
あの瞬間、確かに「国際大会」という言葉が現実になった。旗が、国歌が、雨に濡れて光った。その光の粒の中に、藤平の笑い声が混じっていた気がする。
あれこそが野球だ。
いや、あれこそが──我々の生きる理由だったのだ。