プレミア12 ドミニカ戦:ニッカン
あといくつ寝るとダブルビーシー♫などと口ずさみ始めた時点で、もう脳は半分以上やられている。
実際には、まだ山ほど寝なければならない。布団は遠い。未来は長い。それでも歌ってしまう。人間は希望にすがるのではない、妄想にすがって生きるのだ。
そんな浮かれた気分をよそに、緊張で顔面がやや強張った井端監督が、えー、それでは、などと丁寧に言葉を選びながら始めるはずだった運命のメンバー発表、その神聖な儀式をぶち壊すかのように、大谷翔平! 山本由伸! 菅野智之! が、勝手に名乗りを上げてしまった。
ちょっと待て、そこは監督に言わせろ、と一瞬思う。だが次の瞬間には、まあいいか、となる。
なぜなら彼らはメジャーリーガー。
メジャーリーガーとは、秩序を飛び越える生き物である。
というわけで始まる、侍ジャパン新聞シリーズ。
舞台はプレミア12、オープニングラウンド最終戦、相手はドミニカ共和国。WBCではなぜか当たらないが、五輪だのプレミアだので顔は合わせている。妙に因縁めいた、しかし決定的な物語はまだ生まれていない関係。

先発は戸郷。
次世代エース候補、などという、期待と呪いを混ぜ合わせた便利なラベルを貼られてマウンドに立つ。
だが、人生も野球も、そうそう全部が思惑通りに運ぶわけがないことを、我々はすでに骨の髄まで知っている。
そこへ現れる紙面の珍文。
「井上と米米CLUBを結成した戸郷」
何を言っているのか一瞬もわからない。X世代にとっては解読不能の暗号文、もしくはソネット、悪意のない呪詛である。
これを書いている途中で、誰か正気に戻らなかったのか。戻らなかったのだろう。戻れなかったのだろう。
野球の未来が暗いのではない。文章の現在がすでに夜なのだ。

国際大会で削ぎ落としたいものがある。
守備のミスと走塁のミス。
それが得点に絡めば、もう事件である。全力疾走とは根性論ではない。合理だ。数学だ。生存戦略だ。
そんなことは百も承知の栗原が、消化試合という名のぬるま湯に一瞬だけ足を突っ込んでしまったのかもしれない。
意味のないミスで、取れたはずの一点を宇宙の彼方へ放流する。
その一瞬の緩みは、新聞に残り、記憶に残り、そしてこうして文章になって、永遠に晒される。
野球は残酷だ。
だが残酷でなければ、こんなにも人を狂わせはしない。だから我々は、今日もまた紙面をめくる。
あといくつ寝るとダブルビーシー、などと呟きながら。