プレミア12 台湾戦
桑田真澄。その、あまりに透徹した美白の奥底に秘められた「球界の求道者」なる称号が、こともあろうにU-12代表監督という、これまた小学生の清純と大人の権謀術数が入り混じる迷宮の門番として君臨するに至った。
さらにはNETFLIXが鉄壁の配信網を用いて、侍ドキュメンタリー映画「戦いの向こう」を全世界の網膜を焼きつけにきたのである。
これには流石の世間も「お、おう、なんか侍界隈が騒がしいな」と、尻のあたりがムズムズするような、落ち着きのない微熱に浮かされた。
しかし、案ずるな。所詮は一時の祭囃子。トップチームの新監督が決まるまでは、どうせまた凪のような沈黙が球界を包み、我々は再び、無聊を慰めるために過去の新聞紙面という名の「死んだ魚の目をしたアーカイブ」を、一枚、また一枚と、呪詛を吐きながら捲る羽目になるのだ。
私はスポーツ新聞を時に神の如く崇め、時に「この紙屑め!」と便所に投げ捨てるが、侍がコンビニの棚で一面を飾れば、理性よりも先に足がコンビ二へGO。
もはや中毒である。否、これは「愛」という名の不治の病なのだ。
だからこそ、ようこそ侍ジャパン・スポーツ新聞アーカイブへ。

見てみろ、この景気のいい見出しを!
「4連続世界一へ侍M1」
第2回プレミア12、東京五輪、WBC2023、その栄光の連鎖を断ち切らせぬという、スポーツ紙特有の、あの「勝つに決まってるだろ、ええ?」という傲慢極まるコピーの暴力。
だが、我々は知っている。なぜなら、我々はタイムトラベラー。
未来の惨状を網膜に刻み込まれた、呪われし目撃者なのだ。4大会連続世界一などという甘美な果実は、我々の喉元を通り過ぎることはなかった!
スーパーラウンド最終戦、相手は台湾。そして翌日の決勝も、相手は台湾。
ここで台湾側が繰り出した禁じ手を見よ! 試合直前に罰金を叩きつけ、「あ、先発変えまーす」と宣言
登板予定だった両腕TATTOOありの猛者・林昱珉を、あろうことか決勝戦のために温存しやがったのだ。
ルールを金で殴り、牙を研ぐ。これぞ勝負の鉄火場! 仁義なき戦い東京ドーム死闘編!

球場にイチローが現れた。
神のごとき身のこなしで「なんか色々」とやっていた。その神の息吹を浴びた清宮幸太郎は、持ち前の、あの「明日から夏休みです」みたいな陽気なツラで大暴れ、というほどではないが、暴れた。
しかし、悲しいかな。彼らはまだ何も知らない。明日、自分たちを待ち受ける地獄の釜の蓋が開いていることを!
試合は9対6。一見、快勝である。
だが、先発の早川を見よ。4イニングで7四球である。
ピッチクロックというMLBの冷徹な計時装置に対応できず、マウンドで独り、時計の針に首を絞められるかのように喘いでいたのだ。
これを見て西本聖は「日本もピッチクロックを導入せよ!」と、予言者のごとく提言していたが、その声は虚空に消えた。

この試合最大のトラジディは、スタメンに名を連ねた控え組の村林だ。
まさかの先頭打者ホームラン! 狂喜乱舞する紙面! 躍る文字はこれだ。
「天下獲りの手相じゃ〜」
これほどまでに、後から読んで胃液がせり上がってくる文章が他にあるだろうか。
天下獲りの手相を持ち、結果を出したはずの村林も清宮も、なぜか翌日の決勝戦では、ベンチを温める「置物」と化したのである。
侍は勝った。9対6で勝ったのだ。
しかし、その勝利は、翌日の巨大な絶望をより際立たせるための、残酷な「前振り」に過ぎなかったのである。
嗚呼、スポーツ新聞よ。お前のその「フラグを立てる力」だけはきっと世界一だ!
発行日:2024年11月24日
新聞名:日刊スポーツ
大会:プレミア12 2024 スーパーR
対戦カード:侍ジャパン vs.台湾
内容:試合結果と主力選手の活躍