体調不良、天候不良──そんな言い訳が積み重なって、侍ジャパンのドキュメント映画を観る機会をずっと逃していた。
ようやく最終週になって劇場に足を運んだ僕は、まず観客席を見回す。そして、その瞬間、ある種の達成感に似た感情を抱く。
4人。
劇場にいるのは僕を含めてたったの4人だった。
全く驚きはしなかった。そういう映画だったからだ。
前作「憧れを越えた侍たち」は劇場が満席だった記憶がある。それに比べて今回の作品──言うまでもなく興行的には失敗だろう。
で?それがどうした?
この映画が追いかけたのは、昨年の秋、世界野球プレミア12。
メンバー選考から決勝戦まで、井端弘和監督率いるチームの歩みそのものだ。
主力選手の辞退が相次ぐ中で、選ばれた選手たちはどう戦ったのか。映画はその全貌を映し出す。
短い時間ではあるが印象的に差し込まれていたのは、U-12代表、U-15代表で井端が監督をしていたときの映像である。
その中で、未来のトップチームに登ってくるかもしれない子どもたちへ向けた言葉が素晴しかった。その視線の先には、未来の侍ジャパンを背負うかもしれない少年たちの姿がある。
しかし、現在進行形では井端監督には厳しい意見が多いのも事実だ。
「井端じゃ勝てない」「MLB組とのパイプがない」
僕はそれを理解しつつも、反発を禁じ得ない。
それならば、誰がいるというのだ?
イチロー? ダルビッシュ? 松坂大輔? 現実には、井端弘和以上の適任者がいないのではないかーーー僕はそう思う。
この映画のハイライトは、台湾での雨中のキューバ戦だ。9回表、満塁、ピンチの場面で藤平尚真が放った投球。
あの瞬間に何かが変わった──そう確信するほどの緊張感。
藤平尚真をWBCの舞台で観たい、彼があのユニフォームを再び着る日を待ちたい──僕はそう願わずにはいられない。
そして同時に、井端弘和監督に対する感謝が心に沸き上がる。
劇場の暗闇の中、エンドロールが流れる。観客は4人、いや、もはや1人でも良かった。
最終回の舞台で、僕は確信した。この映画は、諦めを受け入れろと教えるためではなく、その逆を示すために作られたのだ、と。
「最終回だぞ。
まだ、諦める必要はない」
最終週に滑り込んで劇場へ足を運び、結果として、僕は2種類のステッカーを手にすることとなった。きっと余ったのだろう。
配布する側もさして迷うことなく手渡したのだと思う。
そんな風にして、特に期待もせずに向かった先で、僕は少しだけ運が良かったのかもしれない。
最後のチャンスに飛び込んで得られた小さな幸運。そういうものを大切にしていきたいと、何故だか妙に思ったのだった。