侍ジャパンと、ユニフォームと

野球日本代表、すなわち侍ジャパンのユニフォームなどに関する二、三の事柄。日本代表ネタ、国際大会ネタがないときは野球カードでつなぎます。お許しを。

侍ジャパンシリーズ2025韓国代表戦 メンバー決定!

侍ジャパンシリーズ2025

2025年11月15日・16日に東京ドームで開催される「侍ジャパンシリーズ2025 日本 vs 韓国」の出場メンバーが正式発表された。

だが、ファンの目を引いたのは──村上宗隆と佐藤輝明の不在である。

事前の報道で出場が見込まれていた両者がリストに見当たらない。

この違和感の裏側に、井端弘和監督が描くチーム哲学の影が見える。

 

侍ジャパンメンバー

監督

89 井端 弘和

 

ヘッドコーチ

88 金子 誠

 

バッテリーコーチ

74 村田 善則(読売G)

 

投手コーチ

84 能見 篤史

81 吉見 一起

 

内野守備・走塁コーチ

77 梵 英心(阪神T)

 

外野守備・走塁コーチ

79 亀井 善行(読売G) 

 

野手総合コーチ

71 松田 宣浩

 

投手

13 森浦 大輔(広島C)

14 隅田 知一郎(埼玉西武L)

15 大勢(読売G)

16 種市 篤暉(千葉ロッテM)

17 伊藤 大海(北海道日本ハムF)

19 髙橋 宏斗(中日D)

20 曽谷 龍平(オリックスB)

21 金丸 夢斗(中日D)

37 及川 雅貴(阪神T)

46 藤平 尚真(東北楽天GE)

57 北山 亘基(北海道日本ハムF)

61 平良 海馬(埼玉西武L)

62 西口 直人(東北楽天GE)

66 松本 裕樹(福岡ソフトバンクH)

90 松山 晋也(中日D )

 

捕手

4 若月 健矢(オリックスB)

10 岸田 行倫(読売G)

12 坂本 誠志郎(阪神T)

27 中村 悠平(東京ヤクルトS)

 

内野手

2 牧 秀悟(横浜DeNA)

5 牧原 大成(福岡ソフトバンクH)

6 村林 一輝(東北楽天GE)

25 岡本 和真(読売G)

51 小園 海斗(広島C)

99 野村 勇(福岡ソフトバンクH)

 

外野手

1 森下 翔太(阪神T)

50 五十幡 亮汰(北海道日本ハムF)

60 岡林 勇希(中日D)

 

 

 

 

 

 

選手構成から透けて見える “思想的選考”

 

投手編:「中継ぎ・抑え」型が中心、左腕も多く、戦術の転換点か

今回の代表投手には、髙橋宏斗、大勢、伊藤大海、松山晋也、藤平尚真らが名を連ねた。特徴的なのは、先発型よりもリリーフ型・短期決戦向け投手の多さである。

井端監督が目指すのは、WBCにおける「複数リレー制」なのだろう。

少ないイニングで役割を果たすこと──その実験の場として、今回の韓国戦は設定されたようにも見える。

また、左腕投手の比率が高いのも注目点だ。韓国打線への相性を意識した布陣であることに加え、「リリーフ多投・多彩なタイプを織り交ぜる」現代野球の戦略的潮流を反映してる。

井端ジャパンの課題の一つである中継ぎ左腕のポジションが、森浦 大輔、及川 雅貴、金丸 夢斗、隅田 知一郎、曽谷 龍平で争われるというわけだ。

マウンドとは“戦術の臓器”であり、投手起用の選択とは、チームの思想の表出である。今回の構成には、勝利と育成(侍ジャパンは継続される存在である)両方の意識が同居している。

 

捕手編:捕手陣に見える「刷新の意図」──坂倉不在、初招集捕手の意味

これまでの井端ジャパンで正捕手格とされてきた坂倉将吾が外れた。

代わりに選ばれたのは、若月健矢、岸田行倫、坂本誠志郎、中村悠平といった顔ぶれである。

つまり、全員が井端体制での初選出である。経験や安定を捨て、あえて“未知の捕手群”を並べたのはなぜか。

それは、「再構築」ではなく「再発見」への意思だ。

井端監督が掲げる“チーム内競争の可視化”という理念──その実践として、捕手という最も頭脳的なポジションから、思考を揺さぶりにかかっている。

捕手は単なる守備者ではない。

采配と投球、呼吸と心理をつなぐ装置であり、監督のもう一つの視神経だ。

このポジションを刷新するということは、チームの視界を変えるということでもある。

 

野手編:村上・佐藤輝不在の「沈黙」が語る、打線再構築の狙い

村上宗隆、佐藤輝明──この2人の不在が示すのは、「チームの再設計」に他ならない。

打線を見ると、岡本和真、牧秀悟、森下翔太、岡林勇希、牧原大成など、確かに俊足巧打の選手は多いが、長距離砲の数は少ない。

井端監督は、以前から「長打力の不足」を課題に挙げていた。にもかかわらず、あえて重砲を外すという逆説。

その意図は、“固定された強打者構造”を一度解体し、より柔軟で多様な攻撃モデルを試すことにあるのかもしれない。

 

 「勝つために最短距離を走るのではなく、

勝ち方そのものを再定義するために、遠回りを選ぶ」

 

村上と佐藤が不在であることが、「チーム内の空白」ではなく、新しいエネルギーが流れ込む余白になり得る。

その沈黙は、次の打者たちに問う──

「お前は何を打つのか。どう打線をつなぐのか」

 

二遊間の名簿に5人、外野手に掲載された3人の名前のアンバランスさは、ある欠落の輪郭を際立たせている。

二遊間5人の存在が示しているのは、選ばれたという事実よりも、選ばざるを得なかったという事情のほうだ。

侍ジャパンという象徴装置の中にあって、かつて不動の位置にあった「正遊撃手」という概念は、いまや空白として機能している。時代の断層のように。

一方、外野の構図はより明確だ。

MLB組、近藤健介もしくは周東佑京。その名を挙げた瞬間、すでに残りの椅子は一脚しか残っていないことが予想される。

壮絶なサバイバルレース。

 

 

言葉の残響として:選考の透明と曖昧の狭間を読む

今回の「侍ジャパンシリーズ2025」は、単なる強化試合ではない。

それは、次の世代を見据えた「思想のテスト」であり、チームという共同体を再構築するためのリハーサルである。

この発表を「ただの発表」と受け取るのではなく、むしろそこに潜む「選択の残響」を読むのであれば、我々は二つの潮流を見ることが可能となるだろう。

 

一つは実務重視・戦術重視の選考原理。

中継ぎ・抑え重視、左腕配置、捕手の刷新、選手の可変運用。

これらは、勝利の可能性を均衡させ、展開によって組み替えられる「野球の動的構造」を意識したものだろう。

 

他方には、精神・メッセージ性を帯びた選考。

スター不在、初招集捕手の投入──これらはファン・選手双方に問いを投げる。 「誰が次の舞台に立つのか」「代表とは誰に開かれているのか」

静かなる挑戦として──指揮者(井端監督)は、選手たちに「競争の場」を打ち立てようとしているようにも感じられる。

 

そして長距離砲不在の点は、あえて「荒地」を残したような選択だったかもしれない。荒野を設け、その中で誰が光を見せられるかを問いたい。

競争の火花を、静かに燃やしたい。そうした意図が、このメンバー発表という表層の向こう側に、ゆるやかに透けて見える。

 

井端ジャパンは今、選抜という名の詩を綴っている。その一行ごとに、野球という言語の可能性を問い直しながら。

 

 

 

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