侍J無双エースがWBC参戦!
侍ジャパンから、「敗北という選択肢」が剥奪された。
プレミア12の頂点、東京オリンピックの金色の記憶、日本シリーズの反復する歓声、WBC2023の全身を震わせる勝利、そしてワールドシリーズ制覇とMVP──その連続する光芒の中心にずっとひとり立っていた日本球界の“論理的帰結”としての存在、絶対的エース山本由伸が、ついに侍ジャパンへと帰還する。
彼が戻ってくるというだけで、大会は別の相を帯びはじめる。
世界が密かに予感していた物語の本筋が、ようやく線をたどり始めるように。
WBCとは本来、こういう“混線”を引き受ける舞台だった。
他の国際大会では、ほとんど律儀なまでにNPBの骨格だけで戦う侍ジャパンが、WBCになると突如としてMLB組を呑み込み、化学反応──いや、もはや生理的な変容と呼ぶべき何か──を起こす。
国境を越えて散らばった才能が、四年に一度、奇妙な引力に導かれて一点に集まる。その中心に、山本の名が再び刻まれる。
とはいえ大谷翔平のときと同じように、山本のWBC出場を“望まない”ファンは少なくないらしい。
彼の決断よりも、自分の判断のほうが正しく、合理的で、彼の未来をより深く理解していると本気で信じているわけだ。
つまり彼らは、山本由伸というひとりの人間を、山本自身よりも正確に把握しているつもりなのだろう。なかなかの超常的能力である。

まあ、楽しみ方は自由なので、そこに異議を挟む気はない。
ただ、可能であれば──そうだな、Xマークのついたマスクでも装着して、WBCが閉幕するまで静かに呼吸だけしていてくれれば助かる。
こちらはこちらで、最高到達点を更新し続ける投手の帰還を雑音なしで確かに見届けたいのだから。
