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第2回アジア プロ野球チャンピオンシップ開催
あれから6年
いまや時代の流れに埋もれた記憶となりかけている2017年。
日本、韓国、台湾の3ヶ国が集った第1回アジアCSは、稲葉監督が指揮する初の戦場で侍ジャパンが頂点に立つという、記念碑的な幕切れを迎えた。
だが、その後に訪れた新型コロナウイルスの猛威は、4年ごとに開催されるはずだったこの大会の歯車を大きく狂わせた。そして、時は流れ、ふたたびこの大会が6年ぶりに動き出す。
今大会からはオーストラリアが新たに参戦し、4ヶ国が激突する構図となる。
これが新しい秩序を生むか、あるいはただの拡張に過ぎないのかはまだ分からない。だが、確かなことが一つある── これは、若き選手たちの未来を占う舞台であるということだ。
U-24とOA枠
本大会は、未来を託された若者たちによる戦いである。そのため、以下の制約が加えられている。
年齢制限:1999年1月1日以降生まれ、つまり24歳以下。または入団3年以内の選手。
オーバーエイジ枠:29歳以下の選手が最大3人まで出場可能。
これらの制約は選手たちの背景に新たな物語を生むことになるだろう。
オーバーエイジがU-24を導く師弟関係の構築、新進気鋭の挑戦者が掴むであろう一瞬の輝き── そのすべてが、この大会の中で織りなされる。
新しい時代を担う若者たち
アジアCSとは何か。
それは、次なる国際大会へ向けた「前兆」であり、「予兆」である。
未来を担う若き選手たちがここで得る経験と挫折、そのすべてが、やがて訪れる別の舞台の一部となるだろう。
そして我々観客もまた、この群像劇をただ目撃するだけではなく、そこに交錯する無数の物語を味わい尽くすべきだ。11月の戦いは、その瞬間を心に刻むということなのだ。
日本代表メンバー
監督
89 井端弘和
ヘッドコーチ
88 金子 誠
バッテリーコーチ
74 村田 善則
投手コーチ
81 吉見 一起
内野守備・走塁コーチ
77 梵 英心
外野守備・走塁コーチ
79 亀井 善行
投手
15 早川隆久(東北楽天GE)
16 隅田知一郎(埼玉西武L)
17 赤星優志(読売G)
19 佐藤隼輔(埼玉西武L)
20 横山陸人(千葉ロッテM)
21 吉村貢司郎(東京ヤクルトS)
34 田口麗斗(東京ヤクルトS/OA枠)
37 及川雅貴(阪神T)
47 桐敷拓馬(阪神T)
48 今井達也(埼玉西武L/OA枠)
50 清水達也(中日D)
59 根本悠楓(北海道日本ハムF)
捕手
22 古賀悠斗(埼玉西武L)
31 坂倉将吾(広島C/OA枠)
58 石橋康太(中日D)
内野手
2 牧秀悟(横浜DeNA)
8 佐藤輝明(阪神T)
9 野口智哉(オリックスB)
24 紅林弘太郎(オリックスB)怪我のため辞退
24 野村佑希(北海道日本ハムF)追加招集
35 門脇誠(読売G)
51 小園海斗(広島C )
外野手
1 藤原恭大(千葉ロッテM)
23 森下翔太(阪神T)
55 秋広優人(読売G)
60 岡林勇希(中日D)
66 万波中正(北海道日本ハムF)
基本オーダー
1 (指) 藤原 恭大
2 (遊) 小園 海斗
3 (左) 森下 翔太
4 (一) 牧 秀悟
5 (捕) 坂倉 将吾
6 (右) 万波 中正
7 (二) 門脇 誠
8 (三) 佐藤 輝明
9 (中) 岡林 勇希
予選リーグ
第1戦:東京ドーム
台湾 VS. 日本
🇯🇵 000 000 103 4
🇹🇼 000 000 000 0
(日)赤星、及川、根本、桐敷、田口 − 坂倉
(台)古林睿煬、王志煊、林凱威、曾峻岳、陳柏清 − 戴培峰
【本】森下
新生侍ジャパンの初陣となったアジアプロ野球チャンピオンシップ2023の台湾戦。
やはり国際大会の初戦は難しい。
日本打線は台湾代表先発の古林睿煬を攻略することができずに、ノーヒットで5回を終えた。6回にようやく門脇がチーム初安打を放ったが得点には至らず、緊迫した投手戦がつづいた。
7回表にようやく森下のホームランで1点を先制すると、9回表にまたしても森下がヒット。さらに牧、サトテルにもヒットが出て満塁のチャンスをつくった。ここから万波、坂倉、門脇のタイムリーで3点を追加した。
先発の赤星は5回途中までを3安打無失点に抑え、リリーフ陣も無失点で完封リレーとなった。
特筆すべきは1点差の終盤8回表の日本の攻撃で、ノーアウトから万波が出塁するがバントの指示はなく坂倉、門脇、秋広が凡退で得点にはならなかった。無得点の同点だったらどうしていたかが気になるところだが、これが井端采配で、新しい侍野球となるのだろうか。実に興味深い。
第2戦:東京ドーム
日本 VS. 韓国
🇰🇷韓国 000 000 001 1
🇯🇵日本 001 100 00X 2
(日)隅田、横山、田口 − 坂倉
(韓)李義理、呉原錫、崔浚鏞 − 金亨俊
【本】万波
侍ジャパンの先発は隅田知一郎。韓国代表先発は李義理。
先発隅田は必殺のチェンジアップが冴えわたり、7回を3安打無失点7奪三振の好投。
打線は3回に無死満塁のチャンスに、牧の内野ゴロの間に1点を奪った。つづく4回裏には万波に待望のホームランが出て2点差とした。
その後は両チームともに無得点のまま9回へ。侍ジャパンは抑えの田口がマウンドに上がるが、2死からキャッチャーの金亨俊にホームランを打たれてしまい、1点差となった。だが最後のバッターを三振に仕留め、侍ジャパンは接戦を制した。
第3戦:東京ドーム
豪州 VS. 日本
🇯🇵日本 102 101 32 10
🇦🇺豪州 000 000 00 0
8回コールド
(日)早川、吉村、佐藤、清水 − 古賀、石橋
(豪)ブシェル、K.ホール、ラバーティー、クーパーバサラキズ、ビーティー − バーンズ
日本の先発は早川。オーストラリアの先発は18歳の若きホープ、ブシェル。
決勝進出を決めている日本はスタメンを大幅に入れ替えてきた。
侍ジャパンの先発早川は韓国戦の隅田同様の快投を見せ、5回を7奪三振のパーフェクトに抑える。
打線は初回に、今大会絶好調の小園のタイムリーで1点を先制すると、3回にも万波のタイムリーで追加点を挙げた。侍ジャパンはさらに得点を重ねて8回に10得差としてコールドゲームが成立した。
投手陣は早川の後の吉村も1回と2/3を無安打無失点で抑えた。2死から交代した佐藤は2つの四球とヒットで満塁のピンチをつくってしまうが、つづく打者をセカンドフライに打ち取り無失点で切り抜けた。最後は清水が危なげないピッチングで、試合を決めた。
攻めと守りが噛み合った、といったところだが、なんせオーストラリア代表のディフェンスが苦しかった。台湾、韓国と延長戦を戦ったのが信じられないくらいに無駄なミスを乱発していた。外野手では俊足のホワイトフィールドが攻守を見せたが、内野は厳しいものがあった。
まあその隙を見逃さずに攻め切った侍ジャパン、という見方もできるわけだが、それよりも日本とオーストラリアの、トップチームの層の厚さの差を感じさせる試合となった。
決勝ラウンド
決勝戦:東京ドーム
日本 VS. 韓国
🇰🇷韓国 002 000 000 1 3
🇯🇵日本 000 011 000 2X 4
(日)今井、根本 、桐敷、田口、吉村 − 坂倉
(韓)郭斌、崔丞鎔、崔俊鏞、崔智旻、鄭海英 − 金亨俊
【本】牧
アジアプロ野球チャンピオンシップ2023決勝戦、侍ジャパンの先発は今井達也!韓国先発はWBC日本戦でも登板した郭斌。
侍ジャパンの先発今井は初回は最高のピッチングで韓国打線をねじ伏せるが、3回に四球、バント処理のエラーで無死1、2塁のピンチを招くと、韓国の4番盧施煥にタイムリーを打たれて2点を先制されてしまった。
今大会初のリードされた展開で、侍ジャパンは5回裏に牧のソロホームランで1点を返し、さらに6回裏に佐藤輝明の犠牲フライで同点に追いついた。
その後は二番手の根本が韓国打線を抑え、終盤は両チームともに得点なく、試合は延長タイブレークに突入した。
日本はルーキーの吉村に交代。ゲッツーで二死とするが、3番の尹棟熙にタイムリーを打たれ1点を勝ち越されてしまう。
10回裏の日本はランナー藤原、小園でバッター森下でスタート。森下に代打・古賀を送り犠牲バント。つづく牧が申告敬遠で、5番坂倉の犠牲フライで同点に追いつく。つづく万波がふたたび申告敬遠で満塁となり、7番門脇。前の打席で強振していた門脇だが、ここは逆らわずにレフト前ヒット!
侍ジャパン、サヨナラ勝ち!
アジアCSの可能性
アジアCSを継続せよ
アジアプロ野球チャンピオンシップ(以下アジアCS)。この大会には、野球というスポーツが持つ「未来への手応え」が詰まっている。
アジア各国が一堂に会し、その手にバットを握り、ボールを追う姿は、単なるスポーツの枠を超えた一つの文化の交差点だ。
だが、何よりも重要なのはこの大会の「継続」にある。次回がいつになるのかは未定だが、4後か、はたまたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の年に合わせるのか── そんな議論はまだ遠い未来の話である。
ただ一つ、間違いなく言えるのは、安定した継続こそが、この大会を「文化」に昇華させるための最低条件だということだ。
可能性の消滅と再生
かつて、ナショナルチームではなくクラブチームによる「アジアシリーズ」という大会が存在した。
だが、それは「消えた」。
2020年には「BFAアジア大学野球選手権」という新たな大学世代のアジア大会が計画されていたが、新型コロナの波に飲まれたまま、今もその痕跡は霧の中にある。
だからこそ、アジアCSの存在はなおさら際立つ。
アジアCSへの参加国がもっと増えたらどうなるのだろう?そんな「可能性の未来」を考えるのもまた楽しいだろう。
より多くの国が参入すれば、アジア全体の野球の地殻変動が起きるはずだ。アジア野球の底上げ、そして次世代のスター選手たちの発掘。
この大会が「その場」として機能する日は、そう遠くないはずだ。
侍ジャパンというブランド
日本ではWBCでの優勝もあり、侍ジャパンへの注目度は高かったのだが、平日の予選リーグの観客動員は冴えなかった。
グッズ売り場の喧騒と観客席の閑散とした様子とのギャップは、単なるマーケティング戦略の失敗に帰するにはあまりにも象徴的である。
それは、「野球人気」という単語が内包する多義性── 果たしてそれは選手の躍動に向けられたものなのか、あるいは消費されるブランドとしての侍ジャパンに向けられたものなのか── を浮き彫りにしていた。
決勝戦で超満員となった光景は、一見すると希望の兆しにも見えるが、逆に言えば、この国では「決勝」というラベルがなければ観客を集められないという現実を露呈しているとも言える。
新チームの胎動
大会期間はわずか4日間。
このコンパクトさが観戦の敷居を下げる利点を持つ一方で、競技そのものが持ちえる物語性を深めるには不十分だ。
しかし、この短さこそが、若手選手に経験を与える「訓練の場」としては適しているという見方もできる。
そして何よりも重要なのは、この大会がWBC開催年の秋に位置づけられることによって、アジア各国にとって次回WBCに向けた「チームの胎動」を促すきっかけとなる。
アジアの純真
アジアCSは単なる大会以上の「何か」になり得る。それはアジアの野球界全体を照らす光であり、未来の地図に刻まれる新たなルートなのだ。
続いてほしい。
この大会は、果たして未来の礎となり得るのか、それとも一過性のイベントとして歴史の片隅に消えるのか。
それを決めるのは、アジアの野球界が自らの運命をどのように描き、行動するかにかかっている。我々はその推移を目の当たりにすることになるだろう。