侍ジャパンと、ユニフォームと

野球日本代表、すなわち侍ジャパンのユニフォームなどに関する二、三の事柄。日本代表ネタ、国際大会ネタがないときは野球カードでつなぎます。お許しを。

侍ジャパンの歴史・記憶 2023WBC後篇: 野球界の勝利、そして、野球ってすげえ

WBC2023:後篇

 

     🔽Contents🔽

 

決勝ラウンド

プールA、B、C、D

散らばった4つのプールで進められた、まだどこか実験的でありながら、不思議な秩序を保つ戦い。その果てに残った8ヶ国、8つのチーム。

キューバとイタリア。

日本とオーストラリア。

メキシコとアメリカ。

そしてベネズエラとプエルトリコ。

それぞれが、それぞれの運命を背負って次のステージへと進んだ。

 

ドミニカ共和国。この名前を聞けば、多くの野球ファンが「優勝候補」として記憶していたはずだ。

それがどうだ、1次ラウンド敗退。波乱と言うにはあまりにも重い事実が突きつけられたわけだが、これがドミニカとも言える。全勝優勝したかと思えば、2次ラウンドにも進めない、それがドミニカ共和国代表というチームである。

そして、アジアの隣国、韓国。3大会連続の1次ラウンド敗退という現実が、静かに、だが確かに刻まれた。

 

東京とマイアミ

散っていた舞台は二つの都市に収斂された。それぞれの場所で、それぞれの物語が紡がれる。

キューバはオーストラリアと、日本はイタリアと対峙する。

マイアミではメキシコがプエルトリコと、アメリカがベネズエラと戦う。

世界が2つに分かれ、しかし1つに繋がる奇妙な感覚。それが、この大会を観る者に与える錯覚のような現実だ。

 

各試合の行方がどうなるか、誰にも分からない。ただ、目を離さないことだ。それが、この世界の中の野球が我々に課す唯一の義務であるかのように。

 

 

準々決勝:東京ドーム
日本 vs. イタリア
🇮🇹 0 0 0  0 2 0  0 1 0   3
🇯🇵 0 0 4  0 3 0  2 0 X    9
(日)大谷、伊藤、今永、ダルビッシュ、大勢 ―  甲斐、中村
(イ)カステラーニ、ラソーラ、パランテ、ニットーリ、マルシアーノ、フェスタ、スタンポ ― サリバン
【本】岡本1号、吉田1号、Do.フレッチャー1号

 

準々決勝、WBCでは初となる日本とイタリアの対戦である。
日本の先発は二刀流・大谷翔平、イタリア先発はカステラーニ。
侍ジャパンは3回裏、4番吉田正尚の内野ゴロで1点を先制。さらに2死1、2塁となり、6番岡本和真がスリーランホームランを打ち4点差とした。
だが5回表に大谷翔平が制球を乱し、フォアボールなどで2死満塁のピンチを招くとフレッチャー弟にタイムリーを打たれた。
2点差に迫られた侍ジャパンは直後の5回裏、村上、岡本の連続タイムリーで2点を奪い、ふたたび点差を広げた。
投げては、大谷翔平の後を伊藤大海と今永昇太が完璧に抑え、さらにはダルビッシュ有、最後は大勢が試合を締めた。
侍ジャパンは5大会では連続で決勝ラウンド進出を決めた。

 

 

 

 

準決勝:ローンデポ・パーク
日本 vs. メキシコ
🇲🇽 0 0 0  3 0 0  0 2 0   5
🇯🇵 0 0 0  0 0 0  3 1 2x   6
(日)佐々木、山本、湯浅、大勢 ― 中村、甲斐、大城
(メ)サンドバル、アルキーディ、ロメロ、クルーズ、レイエス、ガイェゴス ―  バーンズ
【本】吉田2号、 L.ウリアス1号

 

14年ぶりの決勝進出を目指す侍ジャパンと、初の決勝進出を目指すメキシコ代表。
侍ジャパンの先発は令和の怪物・佐々木朗希、メキシコ代表先発はサンドバル。
侍ジャパンはメキシコにWBC、五輪、プレミア12の主要国際大会では負けていないが、WBC以外の結果はまるで意味をなさないだろう。
先制したのはメキシコ代表。4回表に、好投していた佐々木朗希が2死から連打を浴び、6番ウリアスに3ランホームランを打たれてしまう。
5回から侍ジャパンは日本の絶対的エース山本由伸に投手交代。山本は7回までを無失点に抑える。
そして7回裏、2死から近藤、大谷翔平が出塁し吉田正尚が起死回生の同点3ランホームラン!
だが直後の8回表、続投の山本がベルドゥーゴに勝ち越しタイムリーを打たれる。さらに湯浅もタイムリーを打たれ2点差となる。
2点をリードされた侍ジャパンは8回裏に代打山川穂高の犠牲フライで1点差に迫る。
9回表、侍ジャパンは大勢がメキシコを0点に抑えて最終回の攻撃にすべてを託す。
9回裏、先頭バッターの大谷翔平は初球を振り抜き2ベースを打つ。つづけ!とばかりに塁上でチームメイトを鼓舞する。鼓舞する。鼓舞するのだった。
四球を選んだ吉田正尚は託す。あの男に未来を、すべてを託すのだった。
託されたのは、ここまで不振の村神様。

そして列島大歓喜のサヨナラタイムリー。

代走周東が神がかった走塁でサヨナラのホームを踏んだ。

物語の力?
いや違う。

ダルビッシュ有の円陣からはじまり、準決勝先発という重積を背負った佐々木朗希、エースとして第2先発を任された山本由伸、打たれながらも1失点で踏ん張った湯浅、スリーバントを決めた源田、キャノン発動の甲斐、好走塁の中野、犠牲フライを打って1点差とした山川穂高、9回を抑えた大勢と大城、ヘルメットを脱ぎ捨てチームメイトを鼓舞する大谷翔平、代走周東の走塁、まさに全員野球、総力戦で勝ち取った決勝進出。
侍ジャパンは14年ぶりのWBCファイナル進出!
まだ、ふたたび、まだ見ることができるという、この春の日の幸福の日。
メキシコ代表監督の言葉どおり、野球界の勝利!
そしてこれからの先々、心と身体を削るような言葉で語り継がれるであろう、新たなる伝説!
輪の中にいる。わたしたちは、輪の中にいる。

 

 

 


決勝:ローンデポ・パーク
アメリカ vs. 日本
🇺🇸  0 1 0  0 0 0  0 1 0   2
🇯🇵  0 2 0  1 0 0  0 0 X   3
(日)今永、戸郷、髙橋宏、伊藤、大勢、ダルビッシュ、大谷 ― 中村
(ア)ケリー、ループ、フリーランド、アダム、ベドナー、ウィリアムズ ― リアルミュート
【本】村上1号、岡本2号、ターナー5号、 シュワーバー2号


WBC初の日本対アメリカによる決勝戦。
日本球界が、ずっと前から、誕生した瞬間から、夢に見つづけてきた対戦、真の頂上決戦!
アメリカ代表はマイク・トラウト、侍ジャパンは大谷翔平がそれぞれ国旗を手にして入場。
侍ジャパンの先発は今永昇太、アメリカ先発はM・ケリー。
先制はアメリカ代表、2回表に今大会絶好調のターナーがソロホームランを打ち1点を奪った。
だが直後の2回裏にNPB組、いわゆる国内組の村上宗隆のソロホームランで、侍ジャパンは同点に追いつく。
さらに1死満塁で、ヌートバーの内野ゴロの間に1点を追加。
4回裏には、やはりまたNPB組、いわゆる国内組の師匠・岡本和真のソロホームランで、1点を取り点差を広げた。
3回から2イニングを抑えた戸郷翔征。四球は出したが安打は許さず、無失点で次につないだ。次世代の侍ジャパンの先発陣を担うか。
侍ジャパン最年少の髙橋宏斗。ピンチはつくったが、無失点で切り抜けた。戸郷とともにやはり次世代侍ジャパンの主力投手になる逸材だろう。
次の伊藤大海は唯一、一人もランナーを出さずにアメリカを仕留めてくれた男。三振を取った後の渾身のガッツポーズはやはり画になる。

さらに決勝ラウンド2戦連続登板の大勢。そう遠くない将来にはメジャーデビューなのか、それとも意中の阪神タイガースに行くのか?
先発今永昇太から国内組の気合いのリレー。日本球界の可能性の高さと未来を感じさせる魂のリレー。
侍ジャパンは8回表にダルビッシュ有に投手交代。シュワーバーにソロホームランを打たれ、1点差に迫られ、ランナーを一人出すが、後続を抑えた。これが最終回のドラマを生む。
最終回、ピッチャーは大谷翔平。2アウトを取り、最後の打者はアメリカ代表主将のマイク・トラウトとなった。
あまりにもドラマティックな展開!
あまりにもドラマティックな瞬間!
あまりにもドラマティックな大谷翔平!
大谷翔平の渾身のスライダーに、トラウトが空振り三振!
栗山監督が、就任以来目指してきた、アメリカの地でアメリカをやっつける!それがこれ以上ない形で結実した!
侍ジャパンが三大会ぶりの優勝を、完全優勝で果たした!

 

 

WBC2023 チャンピオントロフィー

 

WBC2023決勝アメリカ戦ウイニングボール

 

 

史上最大のWBC

あくまで野球界の話だが

この響きがいかにも大仰で、どこかしら空虚にさえ聞こえるのは、現在のメディア環境が生む避けられない空隙かもしれない。

言葉の過剰な装飾は、受け取る側の感情の昂揚を誘うが、同時にその内実の薄さを暴露する。

しかし、それでもなお、2023年のWBCが「史上最大」であったことは否定しようがない。もちろん野球界における「史上最大」だが。

6年ぶりの開催、新型コロナという未曾有の危機を潜り抜けての再開、その背後に横たわる世界的な不確実性を考えれば、このフレーズは的を射ているとも言える。

 

だが、ここで問うべきなのは、我々が「史上最大」という言葉をどのように消費したのか、ということだ。

SNSが国境を越えたコミュニケーションの可能性を広げたといっても、そこに流れる情報はあくまで個別化され、アルゴリズムにより編み上げられた泡沫のようなものだ。

それを真実と捉えるのは愚かだろう。

事実、日本国内におけるWBCへの熱狂は確かに異常であった。しかし、その異常さの内実を分析すれば、果たしてそれが純粋な「野球愛」に基づくものだったのかは疑問が残る。

 

自称大谷ファン界隈

例えば、WBCに対する懐疑的な声の数々。

開催発表直後には、「大谷翔平もトラ兄(トラウト)も我々メジャーファンも、WBCなんて興味ないから勝手に盛り上がってください(笑)」という主張がSNS等で散見された。

まるで我こそが大谷とトラウトの最大の理解者であり庇護者であると、ただの一度の対話も対面もないであろう輩たちがふるまい発する言葉は滑稽でしかなかった。

それは単なる「反対意見」ではなく、むしろ現代的な意味での「抵抗のポーズ」に近いものだろう。

ここには、野球というスポーツそのものに対する批評性はなく、むしろメディアが作り上げた熱狂に対する反発心や、個人的な信条の誇示が見え隠れする。

しかし、そのような言説もトラウト、大谷翔平の参戦表明という「現実」によって、容易に解体されていった。彼らがどこへ消えたのかは不明だが、おそらくは何食わぬ顔をして、「こんなWBCを待っていた!」などと発信して、春の祭典に参加していたのであろう。

つまり、彼らの声は単なる仮構に過ぎなかったというわけだ。

 

改めて問われるべきこと

そして迎えた大会本番。

大谷翔平とマイク・トラウトが交差する奇跡のような瞬間。

それはWBCが「野球」という枠組みを超えて、人間の物語としての深みを見せた瞬間だった。

この出来事は、日本のみならず、世界中の野球ファンの心を打ち、そして「WBCは本当に価値があるのか?」という問いを一蹴したと言っても過言ではないのではないだろうか?

だが、それは同時に、WBCが抱える構造的な問題を覆い隠してしまったとも言えるだろう。

開催時期、組み分けの不公平性、選手と所属チームの利害の対立。

これらの問題は、単なる「課題」ではなく、むしろWBCという大会の本質に関わる「欠陥」そのものだ。

WBCがMLB主導のイベントである限り、これらの欠陥が根本的に解消されることはないのではないか、という恐怖が少なからず、ある。

それでも、我々はこの大会を「継続すべき」だと考える。

その理由は単純だ。

WBCは今や、単なる大会以上のものとなりつつあるからだ。

それは野球の未来を模索する実験場であり、マイナースポーツであるベースボールがどこまでグローバルな文化として成熟できるかを問う試金石でもある。

そして、この「実験」がもたらした成果は、すでに無視できないものとなってきているのだ。

 

時代の引力が作り上げた舞台

この大会がただのスポーツイベントではなく、一種の物語として語られる理由は、その背景に流れる膨大な「時間」と「空間」の厚みにある。

これから何年も経ち、誰かが過去を振り返るとき、2023年のWBCは単なる野球の大会ではなく、野球というスポーツがその存在意義を再定義した瞬間として記憶されるだろう。

この舞台に立ち会えた私たちは、きっと幸運だったのだろう。

野球というスポーツが、その持つ根源的な力をいかにして世界に伝えていくのか。この先の未来は、私たちが想像する以上に豊かで、多層的で、そして熱狂に満ちているに違いない。

野球が、イチローや大谷が夢見たような「普遍的な物語」としての力を持つには、まだまだ時間がかかるだろう。

しかし、その第一歩を踏み出したのが今回のWBCであることは間違いない。これをどう評価し、次に繋げるか。それが、我々に問われているのだ。

 

 

日本野球の魂

新たなフェイズ

かつてない熱狂と感動を呼び起こした今回のWBC。

その頂点に立ったのは、栗山英樹監督率いる侍ジャパンだった。

ここに至るまでの激闘は、日本野球そのものが新たなフェイズへ突入したことを象徴している。

栗山監督が掲げてきた「日本野球の魂」とは、一言で言えば、歴代の日本野球人たちが積み上げてきた伝統と哲学の継承だ。

その響きに「侍魂」などという陳腐な修辞を当てはめてしまえば、その瞬間に重みは霧散し、失笑に変わるかもしれない。しかし、そこにあるのは決して軽々しい言葉遊びではない。

具体的な技術と戦略、緻密さ、そして抽象的な精神性── これらが複雑に絡み合い、日本野球の根幹を形成している。

それは献身と犠牲を伴うプレイであり、同時に、世界基準に伍していくためのパワーとスピードへの適応でもある。

栗山監督はその伝統を継承しながらも、さらなる進化を求めた。

特に投手力という、日本野球最大の武器を中心に据えながらも、そこにパワーとスピードという世界基準の新たな要素を組み込むことで、日本野球をワンランク引き上げる挑戦を続けた。

もちろんこの試みは、栗山監督に始まったものではない。小久保裕紀監督や稲葉篤紀監督といった前任者たちも、従来の“スモールベースボール”からの脱却を模索し、その基盤を築いてきた。

昨年のU-23代表が世界大会で脱スモールベースボールを掲げ優勝を果たしたのも、大きな一歩であった。

そして今回、14年ぶりにWBCを制覇した栗山ジャパン── その姿は、10年以上にわたる試行錯誤と努力の集大成であり、日本野球の魂を体現する新しい侍ジャパンの誕生を告げるものだった。

 

過去と未来の交錯

ダルビッシュ有── その姿勢は常に献身的で、リーダーとしての矜持に満ちていた。

初招集ながらも存在感を示した日系メジャーリーガー、ラーズ・ヌートバー── 彼がもたらしたのは新たな風だった。

そして、国際舞台で二刀流を実践した大谷翔平── そのプレイにはもはや従来の昭和の言葉では語りきれない新しさがあった。

侍ジャパンは変貌を遂げた。

それは単なる進化ではなく、日本野球の過去と未来が交錯する地点で、全く新しい地平を切り開いたというべきだ。

この新たな侍たちは、もはや過去の語彙では収まりきらない存在へと変容しつつある。

 

目標は達成された瞬間に通過点となる

たとえば、2021年の東京オリンピック。稲葉篤紀監督のもと、侍ジャパンがオリンピックで公式競技として初めて金メダルを手にしたとき、それはもう過去の出来事になった。

そして、今回── 栗山英樹監督が率いた侍たちが14年ぶりにWBCを制覇した。

それももう過去だ。

つまりは、終わりではないということだ。侍ジャパンという存在は、そもそも「終わり」を知らないのだ。

あと3年。次のWBCがやってくる。そのとき、今大会で見せつけた圧倒的な強さに、アメリカも、ドミニカも、韓国も、他のどの国も徹底的に目を光らせているだろう。

侍たちはその厳しい包囲網を、どう突破していくのか。そして、どんな姿を見せるのか。

まずは、新監督のもとで迎える秋の「第2回アジアプロ野球チャンピオンシップ」だ。ここが再出発の場になる。

この大会では次世代の才能が輝きを放ち、やがて3年後の本大会へとつながっていくのだ。

だからこそ、侍ジャパンの物語は続く。この国の野球が、世界のど真ん中で光を放ち続けるために。

 

 

WBC2023 優勝メダル

 

WBC2023 チャンピオンリング

 

 

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