侍ジャパン歴代のキャッチャーである。正捕手。昭和的な表現をすると女房役、正妻などとも言う。昭和と言ったが、令和の今でもときどき耳にすることはある。
女房の旦那は誰かといえばもちろん投手だ。すなわちバッテリーは夫婦のような関係、ということになる。他の野手とは違うのだ。
とはいえ旦那のことばかり気にしていてはいけない。扇の要、フィールド上の監督、とも呼ばれる。つまりは考えることが多いポジションというわけだ。それが侍ジャパン、すなわち日本代表ともなると所属チームではない、慣れない選手のことを気にかけなければならないから更に大変である。そんな侍ジャパンの歴代の女房役を見ていきたい。
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🔽Contents🔽
- 1984ロス五輪
- 1988ソウル五輪
- 1992バルセロナ五輪
- 1996アトランタ五輪
- 1999アジア予選
- 2000シドニー五輪
- 2003アジア予選
- 2004アテネ五輪
- 2006WBC
- 2007アジア予選
- 2008北京五輪
- 2009WBC
- 2013WBC
- 2015プレミア12
- 2017WBC
- 2019プレミア12
- 2020東京五輪
- 2023WBCの正捕手は誰だ!
1984ロス五輪
嶋田宗彦(住友金属→阪神)
4試合 17打数5安打 打率.294 3打点
全5試合中、4試合でマスクをかぶっている。捕手としては珍しく、打順は1番か2番だった。足が早かった、というわけでもなさそうで、プロ入り後の盗塁はゼロである。
1988ソウル五輪
古田敦也(トヨタ→ヤクルト)
5試合 17打数6安打 打率.353 4打点
野茂、潮崎、石井丈裕、野村謙二郎などを擁した、もはや野球日本代表の伝説となっているチームである。古田は大会全試合でスタメン出場を果たした。強肩捕手として招集され打順は下位を任されていたが、やはり打撃でも活躍。
1992バルセロナ五輪
高見泰範(東芝)
9試合27打数10安打 打率.370 5打点
大会全試合でスタメン出場の正捕手であり、主将も任されていた。下位打線ながらチーム3位の打率.370である。愛知工業大学時代は西崎幸広とバッテリーを組んでいた。
プロ志向はなく、引退後は東芝の監督や日本代表コーチなどもつとめている。
1996アトランタ五輪
大久保秀明(日本石油→近鉄)
9試合38打数11安打 打率.289 10打点
全試合でスタメンマスクを被る。予選リーグ第4戦のアメリカ戦以降は4番も兼ねた左の大砲で、4本塁打は松中信彦の5本に次ぐ成績である。
1999アジア予選
古田敦也(ヤクルト)
松坂大輔との黄金バッテリー誕生に日本の野球ファンは沸いた。と思う。これまで野球のナショナルチームはアマチュアでの編成で、オリンピックを含めた国際大会にプロ選手が参加することはなかった。だが1998年に国際大会がプロ解禁となり、オールプロで編成された韓国代表に完敗した日本はシドニー五輪予選にプロ選手を派遣したわけである。
とにかく決勝リーグ初戦の台湾戦である。3回に高めのストレートを捕らえられて1点を失うが、あとは三振の山である。9回13奪三振。古田はルーキー松坂のストレートとスライダーを巧みにリードしていたが、さらにはキャッチングがピッチャーに安心感を与えていたように見える。今、ダルビッシュが捕手に求めているフレーミング技術がこれなのか、という感じである。個人的には日本代表史上最強のバッテリーである。
控え捕手は大学生の阿部慎之助と的場直樹。
2000シドニー五輪
鈴木郁洋(中日)
8試合31打数9安打 打率.290
予選に出場した古田敦也に代わってプロから派遣された。全9試合中、8試合でスタメン出場。1試合のみ大学生の阿部慎之助がマスクをかぶっている。
所属チームでレギュラーでもないのに、五輪本選で古田の代役という可哀想な立ち位置を押しつけられ、プロ選手では一人だけ打率3割を切ってしまった。守備面では、やはりアメリカ、韓国、キューバとの重要な対戦でことごとく抑えきれなかったのは痛かった。
控え捕手は野田浩輔と阿部慎之助。
2003アジア予選
城島健司(福岡ダイエー)
3試合14打数2安打 打率 .142
しばらくは日本代表の正捕手を任せられるキャッチャーの登場だと、湧いた。長嶋監督からキャッチャー4番を任された。4番としては波に乗れなかったが、松坂、上原、黒田ら強力投手陣を引っ張り3試合で1失点と守りの野球を実践した。
控え捕手は谷繁元信。
2004アテネ五輪
城島健司(福岡ダイエー)
9試合37打数11安打 打率.378
アジア予選につづきキャッチャーで4番を任された、日本代表待望の強打の捕手。打率.378、7打点、2本塁打と本選では4番の重責を十分に果たしたと言える。
捕手としても、松阪を好リードして6度目の挑戦で五輪で初めてキューバを撃破するなど投手陣を支えた。
控え捕手は相川亮二。
2006WBC
里崎智也(千葉ロッテ)
8試合 22打数9安打 打率.409
メジャー移籍1年目の城島と、負傷の阿部慎之助の二人が出場を辞退したことにより、前年日本シリーズチャンピオンチームの千葉ロッテからの大抜擢となった。
2次ラウンドアメリカ戦以外はすべてスタメンで出場し、大会ではベストナインに選出されるなど、イチロー、松坂大輔と並ぶほどの存在感があった。
控え捕手は谷繁元信と相川亮二。
2007アジア予選
阿部慎之助2試合、里崎智也1試合の出場。
打撃ではヒットなしに終わった里崎に対して、阿部はDHでの出場を含めて3試合で13打数10安打と無双状態であった。
もう一人の控え捕手は矢野輝弘。
2008北京五輪
阿部慎之助固定で行くのかと思われたが、星野監督は意外にも阿部、里崎、矢野を併用して戦った。阿部4試合、里崎3試合、矢野2試合で先発出場である。
阿部も里崎も攻守に渡り精彩を欠いた。
2009WBC
城島健司(シアトル)
9試合 30打数10安打 打率.333
メジャーリーガーとして、2004アテネ五輪以来の日本代表復帰である。この大会を見ていて、やはり日本代表のキャッチャーは城島健司しかいないな、と思った。本来ならアテネ五輪からこのWBCまですべての大会で日本代表のマスクを被るべきてあった。
9試合中8試合でスタメン出場。松坂、岩隈、ダルビッシュらを巧みにリードして侍ジャパン連覇に貢献した。特に2次ラウンドでのキューバ戦では、キューバ打線を翻弄するリードが光った。時代は変わったなと思ったものである。
控え捕手は阿部慎之助、石原慶幸。
2013WBC
阿部慎之助(巨人)
7試合 23打数6安打 打率.261
主将で4番で正捕手という重責を一人で背負っていた。しかも膝は万全の状態ではなかった。大事な1次ラウンドの初戦ブラジル戦ではスタメンを回避していた。
本塁打は2本打っているが、DHで出場した2次ラウンド順位決定戦のオランダ戦での2本であった。やはり3つの大役は重すぎたのではないか。大事な勝負どころでの1本がなかった。
北京五輪、2013WBCでの出場のためか城島や里崎ほどのインパクトがない。城島に匹敵するほどの強打とキャプテンシーをもちあわせたキャッチャーだったが、影が薄い。やはり優勝してマウンドに駆け寄る姿はファンの記憶にずっと残る。
控え捕手は相川亮二と炭谷銀仁朗。
2015プレミア12
嶋基宏(東北楽天)
6試合 19打数4安打 打率.211
8試合中6試合でスタメンマスクの嶋。小久保監督は就任時から、嶋を中心としたチームづくりを目指していた。打撃を期待していたとは思えないので、当然のことにチームをまとめ、守備の中心として機能することが期待されたのだろう。
だが、最も重要といえる準決勝韓国戦では、3点リードのためか明らかに終盤に守備面で隙があった。継投への批判が多い悪夢の準決勝だが、それよりも日本代表のストロングポイントであるはずの細かい野球ができてなかった。
控え捕手は炭谷銀仁朗、中村悠平。
2017WBC
小林誠司(巨人)
7試合 20打数9安打 打率.450
全7試合でスタメンマスクである。本来ならば小久保監督が就任以降信頼を置きつづけた嶋基宏が正捕手のはずだったが、大会前に怪我で離脱を余儀なくされた。そこでスタメンを託されたのが小林誠司だった。
期待されてなかった打撃面でラッキーボーイ的な存在となり、替えられることなくマスクを被りつづけた。この大会を機に飛躍するかと思いきやそうでもなく、くすぶっている。
控え捕手は炭谷銀仁朗、大野奨太。
2019プレミア12
小林誠司(巨人)
3試合 3打数0安打 打率.000
甲斐拓也(福岡ソフトバンク)
4試合 7打数1安打 打率.143
會澤翼(広島)
7試合 15打数5安打 打率 .333
稲葉監督就任以降は正捕手と呼べる絶対的なキャッチャーはいないが、最も近いのは甲斐拓也だろう。稲葉監督初采配となる2017アジアCSから2019プレミア12まで、強化試合や日米野球などすべての大会に選出された捕手は甲斐拓也のみである。
プレミア12ではオープニングラウンドから3人を併用して使い、最終的にはスーパーラウンド最終戦、決勝戦と會澤翼に託された。これは、侍ジャパンが開催国として東京オリンピックへの出場権を獲得していることから、五輪予選も兼ねているプレミア12を予選ではなく選手選考の大会としても戦えたからである。そこで大会を通して結果を出したのが會澤翼だったわけである。
打撃で他の二人を圧倒していた會澤だったが、ディフェンスでも投手陣を安定してリードしていた。
2020東京五輪
甲斐拓也(福岡ソフトバンク)
5試合 16打数 5安打 0本塁打 3打点 打率.385
大会が始まるまでわからない正捕手争いだったが、會澤翼の代表辞退によって甲斐拓也が勝ち取ることになった。
開幕戦での同点セーフティスクイズ、アメリカ戦でのサヨナラ打など打撃でも活躍したが、やはり捕手のメインはディフェンスである。
「甲斐フォン」と呼ばれた、試合中のブルペンとの密な連絡でリリーフ陣を支えるなど、ディフェンスの要として全試合でマスクをかぶった。MVPでもおかしくない活躍だった。
控え捕手は梅野隆太郎。
2023WBCの正捕手は誰だ!
最終ロースターに名を連ねたのは以下の三人となった。前年の強化試合からは森友哉と大城卓三が入れ替わったことになる。
10 甲斐拓也(福岡ソフトバンクH)
24 大城卓三(読売G)
27 中村悠平(東京ヤクルトS)
強化試合の三人はオフェンス型の森、ディフェンス型の甲斐、バランス型の中村と非常にバランスのとれた三人だったが、森友哉が移籍のためキャンプに集中するため辞退となり大城卓三が選ばれた。
国際大会の経験値でいえば甲斐拓也が圧倒していて、先行発表の12人にも名を連ねていた。これを考えると正捕手に一番近いのは甲斐のような気もするのだが、どうも栗山監督は正捕手を決めないような気もするのである。
不動のレギュラーでははなく、先発投手との相性や、その日のゲームプランなどで変えていくような予感がする。
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