6年ぶりの開催となる第5回ワールド・ベースボール・クラシック。侍ジャパンが入っている1次ラウンドのプールB は東京ドームでの戦いとなる。東京ドームでは2次ラウンドとなる準々決勝まで試合が行われ、侍ジャパンが準々決勝を突破し、決勝ラウンドに進出すれば、アメリカ代表との対戦の可能性が強くなる。
そこで、過去のWBCにおける侍ジャパンとアメリカ代表との死闘をふり返ってみたい。
侍ジャパンが、アメリカ代表とWBCで対戦したのは3度である。
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2006WBC・2次ラウンド
3月12日 エンジェル・スタジアム
🇯🇵 1 2 0 0 0 0 0 0 0 =3
🇺🇸 0 1 0 0 0 2 0 0 1× =4
(日)上原、清水、藤田、薮田、藤川 ― 谷繁、里崎
(ア)ピービー、シールズ、T・ジョーンズ、フエンテス、ネイサン、リッジ― ― シュナイダー、バレット
【本】イチロー、チッパー・ジョーンズ、 デレク・リー
開幕当初は日本国内でも決して関心が高いわけではなかった、初のメジャーリーガー参戦の国際大会であるWBCの注目度を一気に上げた試合。
日本の野球はずっと、アメリカを目指してきた。
アメリカに勝つために日本の野球は発展してきたと言っても過言ではない。だが、日本のプロ野球選手がメジャーリーガーと対戦できるのは日米野球ぐらいなもので、真剣勝負とは言い難い。
オリンピックやその他の国際大会にはメジャーリーガーは出場していない。
そのような状況で、遂にメジャーリーガーと対戦する日がやって来たのである。
2次ラウンドの初戦である。
初戦はやはり上原浩治。
そしてイチローが初回にアメリカ代表のエース・ピービーから先頭打者ホームランを放つ。
試合前、対戦相手に憧れの眼差しを向ける日本代表に危機感を覚えたイチローは狙っていた。憧れではなく、勝てる相手だと教えるために第一打席でホームランを狙っていたのだった。
2回表には川崎のタイムリーで2点を追加する日本代表。だが2回裏にチッパー・ジョーンズ、6回には代わった清水がデレク・リーにホームランを打たれ同点に追いつかれてしまう。
で、同点のままむかえた8回表に事件は起きた。
西岡がセンター前ヒットで出塁、多村ファールフライで松中、福留が四死球で一死満塁となる。
ここで岩村がレフトにフライを打ち上げ、西岡がタッチアップでホームイン、勝ち越したかに思われた。が。アメリカの抗議により塁審のジャッジを球審ボブ・デービッドソンがオーバーコール、西岡は離塁が早かったとされアウトになった。
アメリカの抗議は西岡の離塁のタイミングだけでなく、三塁ランナーの離塁の判定を下すのは塁審ではなく球審のはずだ、というものでボブは素直に従ったというわけだ。
こうなると西岡の離塁のタイミングなどどうでもいいような気になってしまって、そもそも自分で塁審に離塁のジャッジを促したくせに、抗議されて、やっぱ自分が判定します、という無茶苦茶なことをしでかしてくれたボブである。
判定が覆りアメリカ代表のマルティネス監督が下品なガッツポーズを決めた瞬間をもって、アメリカ野球が死んだ日、と言われた。
最後は藤川球児が、9回裏にアレックス・ロドリゲスにタイムリーヒットを打たれて、サヨナラ負けとなってしまった。
ボブ・デービッドソンは日本で時の人となり、アクションフィギュアまで販売された。というのはもちろん嘘である。
2009WBC・準決勝
3月22日 ドジャー・スタジアム
🇺🇸 1 0 1 0 0 0 0 2 0 =4
🇯🇵 0 1 0 5 0 0 0 3 × =9
(日)松坂、杉内、田中、馬原、ダルビッシュ ― 城島
(ア)オズワルト、グラボウ、ハウエル、ソーントン、ハンラハン、シールズ ― マキャン
【本】ブライアン・ロバーツ
準決勝のアメリカ戦。
日本代表は打倒キューバを目標にオリンピックを戦ってきたが、日本球界全体で考えてみれば、常に追いつづけていたのはアメリカである。
親善試合に近い日米野球でもなく、メジャーリーガー不在のオリンピックでもない、WBCでアメリカ代表に勝つことこそが日本球界誕生からの悲願のひとつとなったことに間違いはない。
前大会では不運もあり、善戦ではあったが、アメリカに勝利することはできなかった。2009年大会では舞台は準決勝となり、ドジャースタジアムである。
日本代表の先発は松坂大輔。
アメリカ代表の先発はロイ・オズワルト。
松坂同様にシドニー五輪のアメリカ代表でもあり、アストロズのエースピッチャーであった。
前大会のお返しとばかりに、1回表にアメリカ代表は先頭打者ロバーツが松坂の2球目を強振してホームランである。だが、そこで乱れるような松坂大輔ではなかった。
そこから5回途中までを2失点にまとめた。
打線は1点を追う2回裏に稲葉、小笠原のヒットエンドランから城島の犠牲フライで同点。勝ち越された直後の4回裏に打線がつながり5点を奪って逆転。8回に2点差に詰められるがすぐに3点を追加し突き放した。
最後は不調の藤川に代わり抑えにまわったダルビッシュが締めて9対4で勝利し、決勝進出を決めた。
この大会は、韓国との伝説の決勝戦が語り草となっているが、日本球界にとっては長年の悲願が成就された日であり、野球日本代表にとっては、ひとつのマイルストーンとなった試合である。
思えばオリンピックで初めてキューバを撃破したのも松坂大輔であった。やはり彼は何かを持っているのだろう。
2017WBC・準決勝
3月21日 ドジャー・スタジアム
🇺🇸 0 0 0 1 0 0 0 1 0 =2
🇯🇵 0 0 0 0 0 1 0 0 0 =1
(ア)ロアーク、N・ジョーンズ、ミラー、ダイソン、マランソン、ニシェク、グレガーソン ― ポージー
(日)菅野、千賀、平野、宮西、秋吉 ― 小林、炭谷
【本】菊池
2大会ぶりの対戦となった2017WBC。
細かい霧のような雨が降るなか、日本の先発はエース菅野智之。
序盤から日本のエースにふさわしいピッチングを見せた。初回、2回を連続で三者凡退。3回表に先頭のポージーに初ヒットを許すが、後続を抑えて無失点で切り抜けた。
打線は、ボールを動かしながら低めに集める先発・ロアークを捉えきれずに無得点が続いた。
4回表1死からアメリカの3番・イエリチの打球を二塁手・菊池がエラー。2死1、2塁とピンチが広がったところで、6番・マカチェンがタイムリーを打ち、アメリカが先制した。
日本は6回裏に菊池が、アメリカ2番手・ジョーンズから同点となるソロ本塁打を放つ。
だが、8回表にふたたび痛恨のエラーが出る。
千賀が4者連続三振と圧巻の投球を見せたていたが、クロフォード、キンズラーに連打を浴び、1死2、3塁のピンチ。ここで三塁・松田がボテボテのゴロをファンブルし、これがタイムリーエラーとなり、決勝点となってしまった。
アメリカ投手陣の継投に日本打線は4安打。ここまで日本を引っ張ってきた主軸の4番・筒香と5番・中田が無安打と完全に抑え込まれた。
日本のストロングポイントである、ディフェンスが崩れての敗戦は、準決勝敗退という結果以上に大きくて堅い。
WBCでは2大会連続で準決勝敗退の侍ジャパン。中間年のプレミア12も準決勝敗退なので、主要国際大会では3大会連続となる。
この悪い流れを断ち切ったのが稲葉監督で、プレミア12、東京五輪で優勝を飾った。もちろんこの偉業にケチをつけるつもりはないのだが、やはり野球界の最高峰の大会はWBCである。WBCでの世界制覇こそが侍ジャパンの最大の目標のはずだ。
今度のWBCでも、順調に勝ち進めば決勝でアメリカ代表と対戦する可能性が高い。6年前のリベンジは、WBCでしか果たせない。