WBC2009韓国戦:サンスポ
平成21年3月8日のサンケイスポーツ
来ました韓国戦。来るとわかっていても毎回「うわ来た」と言ってしまうこのカード、もはや条件反射である。
オリンピックだろうがWBCだろうが、とにかく殴り合ってきた宿命の相手。その韓国の先発が、あの左腕・金廣鉉。
北京五輪で日本打線を「はい終了です」と言わんばかりに凍結させた、あの冷凍庫ピッチャーである。
ところがどっこい2009年、こちらはきもちEくらいにボッコボコ。野球の神様、気分屋すぎるだろ。
さらに14年後の2023年にも日本戦で先発してくるとか、どんだけ縁があるんだこの人、もう親戚か何かか。
初回に先頭打者イチローがライト前ヒット。これでもうドームが爆発。いや比喩じゃない、ほんとに爆発したんじゃないかと思うくらいの轟音。
まだ0-0、何も起きてないのにクライマックス。映画だったら監督が「早い早い!」って止めるレベル。
あの瞬間、「ああ日本に生まれてよかったなあ」とか、急にスケールのデカい感想が脳内に浮かんできて、自分でもちょっと笑う。でも仕方ない、それくらいヤバい空気だったのだ。

イチローは初戦の中国戦では無安打で「えっ大丈夫?」って空気を全国に撒き散らしていたが、この日は3安打の大暴れ。なんだその手のひら返し、いや違う、手のひらを返されたのはこっちだ。
さらに試合は7回コールド。勝った、圧勝、気分爽快、はい最高!……なんだけど、ちょっと待て。コールドってさ、なんか損した気分にならない?
もっと見たかった、もっと殴り合ってほしかった、ポップコーンまだ半分残ってるんだけど、みたいな。
勝ってるのに文句言うなと言われればその通りだが、人間というのは勝手な生き物である。9回までフルコースで楽しみたいのよ、こっちは。わがまま?知ってる。

はい、東京ラウンド大一番、ここで出てくるのが松坂大輔という男。やっぱりお前か、という安心感。
2000年シドニー五輪から2009年WBCまで(北京はちょっと置いといて)、大事な試合になると必ずマウンドに立っている男。
便利とかそういう次元じゃない、これはもう儀式だ。
「重要局面では松坂を出せ」という日本野球界の奥義。これがエースというやつである。エースってなんだ?と聞かれたら「とりあえず松坂を見ろ」と答えればいい、そんな時代。

一方その頃、いやその頃ではなく昼の部は中国対台湾。で、中国がまさかのWBC初勝利である。
歴史がさらっと生まれる瞬間。しかも監督が元オリックスのコリンズ。なぜそこにいる、というツッコミを入れつつも、こういう予想外の物語が転がっているのが国際大会の面白さ。
野球は何が起きるかわからない、という教科書みたいな一行を、現実がちゃんと実演してくる。

そして日本打線。稲葉に代わって4番に入った村田が、またしてもドカン。
2試合連続ホームラン。おい4番固定でいいんじゃないか、という雑な意見が脳内をよぎる。
気づけば14安打14点。いやいや、ちょっと待て。これライバル国との試合だよな?打撃練習じゃないよな?スコア見て「え、何これ、野球の数字?」って二度見するレベル。強いとかそういう話を通り越して、ちょっと面白くなってくる領域。
こうして韓国戦は、激闘という名のコメディと、圧勝という名の贅沢を同時に提供してくる。
笑っていいのか、震えるべきなのか、よくわからんが、とにかく楽しい。
楽しいから全部OK。WBCってやつは、こうやって人間の感情をジェットコースターに縛り付けて、上げて落としてまた上げて、最後に「はい、もう一周どうぞ」と言ってくる。断れるわけないだろ、こんなの。
発行日:2009年 3月8日
新聞名:サンケイスポーツ
大会:WBC2009東京ラウンド
対戦カード:侍ジャパン vs 韓国代表
内容:試合結果と主力選手の活躍