侍ジャパンと、ユニフォームと

野球日本代表、すなわち侍ジャパンのユニフォームなどに関する二、三の事柄。日本代表ネタ、国際大会ネタがないときは野球カードでつなぎます。お許しを。

【侍ジャパンの歴史・記憶 2017WBC後篇】志半ばでも、日本代表の前に拓かれた新たな道、道、道

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2次ラウンド

プールE:東京ドーム

東京ドームで開催された1次ラウンドプールBからは、日本とキューバが2次ラウンドに進出。一方の韓国・高尺スカイドーム開催のプールAからは、オランダとイスラエルが勝ち上がり、ホームである韓国と台湾はまさかの1次ラウンド敗退となってしまった。
これで、東京ドーム開催の2次ラウンド・プールEはオランダ、イスラエル、日本、キューバによる争いとなった。

 


GAME1
オランダ vs. 日本
🇯🇵  0 1 4  0 1 0  0 0 0  0 2   8
🇳🇱  0 1 4  0 0 0  0 0 1  0 0   6
(日)石川、平野、千賀、松井、秋吉、宮西、増井、則本、牧田 ― 小林
(オ)バンデンハーク、マルクウェル、マルティス、ボルセンブルク、デフロク、ファンミル、ストフベルゲン - リカルド
【本】スコープ1号、中田3号、バレンティン1号

 

2次ラウンドは、9人の投手を送り込む死闘から始まった。
2回表に侍ジャパンが秋山の犠牲フライで1点を先制すると、直後の2回裏にオランダはスコープのホームランで同点に追いつく。
3回表に中田が3試合連続となる3号スリーランホームランなどで侍ジャパンが勝ち越すと、またも直後の3回裏にオランダはバレンティンのツーランホームランなどで追いついた。
オランダに傾きかける流れを引き戻したのは中継ぎ投手陣だった。平野、千賀らの好投で1点を勝ち越して9回を迎えたのだが、則本が同点打を許し延長戦に突入した。
延長タイブレークとなった11回に中田の2点タイムリーで勝ち越すと、最後は牧田が抑えて4時間46分の死闘を制した。

ちなみに、個人的なことを言うと、今回のWBCでわたしが観戦した試合でもある。最後まで見届けて、どうにか終電に乗り込み帰ることができた。

菊池の超ファインプレーは一生忘れない。

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GAME2
日本 vs. キューバ
🇨🇺  0 2 0  2 0 1  0 0 0   5
🇯🇵  1 0 1  0 2 1  0 3 X   8
(キ)バノス、イエラ、ラエラ - アラルコン
(日) 菅野、平野、増井、松井、秋吉、牧田 - 小林、炭谷

【本】山田1号、2号、グラシアル1号

 

侍ジャパンは初回に山田哲人の先頭打者ホームランで先制。だが、先発の菅野がグラシアルに逆転ホームランを打たれてしまう。
だが!直後の3回裏に、今度は筒香のタイムリーヒットで侍ジャパンは同点に追いつく。
だがしかし、直後の4回表にキューバはメサのタイムリーでふたたび勝ち越しに成功。
2点をリードされた侍ジャパンは4番の筒香がまたも同点タイムリーヒット。
その後も同様の展開となり、同点で迎えた8回裏、内川の犠牲フライと山田哲人の2本目となる2ランホームランで3点を勝ち越し試合を決めた。

 

 

GAME3
日本 vs. イスラエル
🇮🇱  0 0 0  0 0 0  0 0 3   3
🇯🇵  0 0 0  0 0 5  0 3 X   8
(イ)ゼイド、アクセルロッド、ソーントン、カッツ、ゴールドバーグ、ヘロン、レーキンド - ラバンウエー
(日) 千賀、平野、宮西、秋吉、牧田 - 小林
【本】筒香3号

 

侍ジャパンの先発は、今大会初先発となる千賀滉大。千賀は5回を1安打無失点の好投で流れを日本に引き寄せた。
打線は5回を終えても無得点だったが、6回裏に4番筒香のホームランなどで一挙に5点奪った。さらに8回にも内川、松田のタイムリーで3点を追加しイスラエルを突き放した。
8点差ある最終回に牧田を投入したのはよくわからない。オランダ戦で、1点リードの最終回に牧田ではなく則本を出している。どちらも結果的に失点してしまった。なにかしら理由はあるのだろうが、疑問が残る終わり方だった。

2次ラウンドのプールEからは日本とオランダが勝ち上がり、ベスト4進出となった。侍ジャパンは4大会連続で準決勝進出を決めている。

 

 

 

 

決勝ラウンド:ドジャースタジアム

プールEから日本とオランダ、もう一方のプールFからはアメリカとプエルトリコが準決勝に進出してきた。前大会優勝のドミニカ共和国は2次ラウンド敗退となった。

 


SEMI FINAL
日本 vs. アメリカ
🇺🇸  0 0 0  1 0 0  0 1 0   2
🇯🇵  0 0 0  0 0 1  0 0 0   1
(ア)ロアーク、N.ジョーンズ、ミラー、ダイソン、メランソン、二ーシェック、グレガーソン ― ポージー
(日)菅野、千賀、平野、宮西、秋吉 ― 小林、炭谷
【本】菊池1号

 

侍ジャパンの先発は菅野智之。やはり準決勝の先発はエースピッチャーである。
菅野は、6イニングを3安打、6奪三振、1失点と敵将ベタ褒めの鬼気迫るピッチングであった
先制点は4回表のアメリカで、名手・菊池のエラーからの失点となってしまった。6回裏にはその菊池がソロホームランを打ち同点に追いつく。
7回から登板の千賀は4連続三振と素晴らしいスタートを見せたが、8回表、またも守備の乱れから日本は勝ち越し点を許してしまう。
クロフォード、キンズラーの連打でピンチを作ると、A・ジョーンズのサードゴロを松田がファンブルし失点してしまった。
1対2と、スコアだけを見ると僅差の惜しい試合であるが、実際は日本の打者とアメリカの投手陣の力量の差に愕然となる試合だった。
アメリカ先発のロアークの、手元で動くツーシームにまったく対応できず、後続のミラー、ダイソン、メランソン、二ーシェック、グレガーソンとメジャー屈指のセットアッパー、クローザーには完全に抑えられた。短いイニングでアメリカの中継ぎ陣を攻略する困難さを考えれば、どうにかして先発ロアークを攻めなければならなかった。

 

WBC2017の課題

小久保監督が掲げたのは、侍ジャパン、野球日本代表のお家芸とも言える「スモールベースボール」ではなく、投手力を中心に据えつつも「ビッグベースボール」で勝ちに行くことだった。
機動力、小技、チームバッティングよりも、バッター個々の力量で勝負していく。
今回のチームに大谷翔平、柳田悠岐がいれば小久保監督の目指す理想のチームになっていたかもしれないが、そうはならなかった。それでも1次ラウンド、2次ラウンドは打ち勝つことができた。
WBCで初めて、無敗で準決勝に進み好調を維持していた侍ジャパンだったが、スコアラーの志田宗大は視察したサンディエゴでの2次ラウンド・プールFのレベルが東京の遙か上を行っていることに愕然としていた。アメリカとの実力差は、日本が10回に1回勝てるかどうか、そう感じたらしい。
つまりは、このときの小久保ジャパンは準決勝敗退が妥当な結果だったということだ。国際大会での優勝には実力だけでなく運も必要なことは、過去の大会で証明されている。準決勝のアメリカ戦も、コンディションの悪さなどもあり、なにかあと一つでも幸運が日本にふり向けば結果は変わっていたかもしれない。
だが、それはそれだ。
このときの小久保ジャパンの布陣では、まだアメリカには力勝負では勝てなかったのだ。
侍ジャパン常設化初の監督として、就任当初から批判も多かった小久保監督だが、侍ジャパンを新たな次元に引き上げようとしたことは評価できる。
侍ジャパンはこの先、ふたたびスモールベースボールに回帰するのか、それとも小久保監督が目指したような、アメリカに対抗できるパワーベースボールへという新たなフェイズを迎えるのか、岐路に立った大会であった。