オリンピック正式競技となって2大会目である。バルセロナでの銅メダル以上を、という目標を掲げて4年計画で臨んたオリンピックであった。
日本代表史上最年少で選出された福留孝介をはじめ、松中、今岡、井口、谷など後にプロ野球で活躍する選手が多数出場している。
大会3週間前に選手村入りするなど周到な準備を重ねていた日本代表だったが、エース杉浦、中継ぎの軸である森らのケガにより予選リーグから苦戦を強いられることになった。
日本代表メンバー
監督
30 川島勝司
コーチ
31 垣野多鶴
32 太田垣耕三
33 井尻陽久
投手
11 三澤興一 →読売G
12 森中聖雄 →横浜B
14 木村重太郎
15 川村丈夫 →横浜B
16 小野仁 →読売G
18 森昌彦
19 杉浦正則
捕手
9 大久保秀昭 →近鉄B
21 黒須隆
内野手
1 福留孝介 →中日D
2 野島正弘
3 松中信彦 →福岡ダイエーH
4 今岡誠 →阪神T
6 桑元孝雄
7 井口忠仁 →福岡ダイエーH
8 西郷泰之
外野手
10 中村大伸
24 高林孝行
25 佐藤友昭
28 谷佳知 →オリックスB
基本オーダー
1(右)高林孝行
2(左)西郷泰之
3(中)谷 佳知
4(一)松中信彦
5(捕)大久保秀昭
6(指)佐藤友昭
7(遊)井口忠仁
8(二)今岡 誠
9(三)福留孝介
予選リーグ
第1戦
オランダ vs.日本
🇯🇵 1 1 1 0 1 2 6 12
🇳🇱 0 1 0 0 0 0 1 2
7回コールド
(日)三澤、森 ― 大久保
予選リーグ初戦はコールド発進となった。
初回に1番高林の先頭打者ホームランで先制。6回まで着実に得点を加え、7回には大量6得点を挙げ試合を決めた。
第2戦
キューバ vs.日本
🇯🇵 0 1 0 0 1 4 0 0 0 1 7
🇨🇺 3 3 0 0 0 0 0 0 0 2X 8
(日)小野、木村、森中、森 ― 大久保
【本】佐藤、福留
オリンピックの舞台でキューバに勝つ、これこそ日本代表の悲願であった。
この試合、あと一歩のところまでキューバを追い詰めたが、延長10回、無念のサヨナラ負けとなった。序盤に5点差をつけられながら、中盤で追いつき延長10回に勝ち越すが、最後は力尽きた。
第3戦
日本 vs.オーストラリア
🇦🇺 0 1 0 0 1 7 0 0 0 9
🇯🇵 2 0 0 0 0 1 0 0 3 6
(日)川村、森中、森、木村 ― 大久保
【本】井口、高林、大久保
まさかの2連敗である。
同点で迎えた6回表、守備の乱れもあり、先発の川村が崩壊。7安打、7失点となり終盤の追い上げも及ばなかった。
このときのオーストラリア代表には大学生のジェフ・ウィリアムスがいた。
第4戦
日本 vs.アメリカ
🇺🇸 7 0 0 0 7 1 0 15
🇯🇵 2 0 2 1 0 0 0 5
【7回コールド】
(日)三澤、木村、森中、森 ― 大久保
【本】高林、松中
まさかの3連敗である。しかもコールド負け。
先輩の三沢はいきなり2本のホームランを打たれて1回ももたずに降板。つづく木村も3連続被弾。いきなり7点を失い、早くも勝負がついた。
アメリカ代表にはグライシンガー、ジェフ・ウィーバーなどがいた。
第5戦
ニカラグア vs.日本
🇯🇵 6 2 0 0 2 0 0 2 1 13
🇳🇮 0 2 0 2 0 0 2 0 0 6
(日)杉浦、木村、川村 ― 大久保
【本】松中、佐藤、谷、福留
崖っぷちの3連敗後に、望みをつなぐ勝利。
1回表から松中のホームランなどで、いきなり6得点。その後も福留のホームランなどで追加点を奪い13得点である。
投手陣はやはりピリっとせず、先発杉浦と木村で6失点と打線に救われた。
第6戦
日本 vs.韓国
🇰🇷 1 0 0 0 0 3 0 4
🇯🇵 0 0 2 3 5 3 1 14
【7回コールド】
(日)杉浦、川村 ― 大久保
【本】谷、松中
先発はなかなか1日で杉浦。初回に1点を失うが、日本は3回裏、谷のツーランホームランで逆転。さらに松中のホームランなどで追加点を挙げ、コールド勝ちを決めた。
最終戦に決勝ラウンド進出の望みをつないだ。
第7戦
日本 vs.イタリア
🇮🇹 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1
🇯🇵 1 2 0 1 3 2 1 2 X 12
【8回コールド】
(日)三澤、木村、森 ― 大久保、黒須
【本】大久保、今岡
格下イタリア代表を相手に継投出7回を1失点。打線も3回以外は毎回の12得点で圧勝して。
ひとつ凄いのは4位で準決勝に進出したのがニカラグアだということだ。
日本とニカラグアはともに4勝3敗で並ぶわけたが、直接対決で日本が3位となったわけである。このニカラグアの奮闘が日本を窮地から救った要因の一つでもあるわけだ。
決勝ラウンド
準決勝
アメリカ vs.日本
🇯🇵 0 3 0 0 3 0 2 2 1 11
🇺🇸 0 0 0 0 0 2 0 0 0 2
(日)杉浦、川村 ― 大久保
【本】大久保、今岡、高林、松中、井口
準決勝はアメリカ戦である。
予選リーグでコールド負けを食らってしまっている。さらには五輪前の練習試合でも大敗している。しかも完全アウェーである。圧倒的不利の予想であったが、エース杉浦が6回を2失点に抑え、攻めては5本のホームランが飛び出し圧勝であった。
決勝
キューバ vs.日本
🇯🇵 0 0 0 1 5 0 1 0 2 9
🇨🇺 3 3 0 0 0 4 1 2 X 13
(日)杉浦、木村、川村、森中、森、三澤 ― 大久保
【本】松中、谷
決勝はキューバ戦。
先発は前日同様エース杉浦である。高校野球か。というわけで序盤で6点を失うという展開。たが日本は5回に6点差を追いつくのである。たがまたすぐに勝ち越されてしまう。6人の投手をつぎ込むが、ことごとく返り討ちにあう。打撃戦を制することはできず、9対13で敗戦である。
日本代表は銀メダルである。
打倒キューバは果たせなかったが、予選リーグでは1点差のサヨナラ負け、決勝では中盤に6点差を追いつくなど手応えはあった。
完全に力負け、というほどの差ではなかった。バルセロナ五輪のときより、確実に距離は縮まっていたといえる。悲願成就までの旅の途中ではあるが、日本代表は確かな成果を見せることはできたのではないだろうか。
金以上の価値がある、と川島監督は選手たちの健闘を称えた。
そして、オリンピックの野球はここを境に大きく変化していく。4年後のシドニー五輪からはプロ選手が出場するのである。